H06/06/07 衆議院 法務委員会




金田 誠一君


vs


法 務 大 臣 中井  洽君

法務省民事局長 濱崎 恭生君




金田(誠)分科員 司法書士の関係につきましてお尋ねをいたしたいと存じます。


 司法書士法第3条でございますけれども、試験のほかに法務大臣が認定することができるという条項がございまして、これを特認というふうにおっしゃっているようでございますけれども、ここ数年のこの特認者数を、12年前で結構でございます、お知らせをいただきたいと思います。



濱崎政府委員 いわゆる特認、法務大臣が一定の職務経験に基づいて資格認定を行う者、その認定者の数でございますが、この数はそういう資格を付与するにふさわしい職務経験を有する者で、その資格付与を希望される方の数が年々変動するという要素がございますので、試験の方の合格者の数と違いまして年々かなり大きな変動がございます。


 ここ12年の数で申し上げますと、二百数十人から三百数十人の数になっております。


数字を申し上げますと、平成4年が347、平成5年が247という数字になっております。



金田(誠)分科員 この特認で認定する場合でございますけれども、認定するに当たっての法務省内部での試験といいますか、そういうものはあるのでしょうか。



濱崎政府委員 この認定の基準は法律で定まっておりまして、一定の職務経験を有する者の中から、法務大臣が司法書士の業務を行うのに必要な知識及び能力を有すると認めた者ということになっております。


 その判断基準といたしまして、その職務経験の期間、その質、職務の内容、そういったことと、それから、最終的に司法書士の業務を行うに必要な知識及び能力を有するかどうかを判定するための一定の試験を行い、その両者をあわせて認可の可否を判定しているという実情でございます。



金田(誠)分科員 といいますと、試験はあるということだと思いますが、その試験はどのように行われているものでございましょうか。


日にちを統一して年に一回とか、それの全国共通の試験問題をどこで作成して、例えば都道府県一カ所で試験をするとか、その辺のところをちょっと教えていただきたいのですが。



濱崎政府委員 ただいま申しましたように、この試験というのは、その認可の申し出といいますか、申請をした人それぞれの職務経験の期間、内容、それと試験とをあわせて、それを総合して、その知識及び能力を有するかどうかという判断をするということでございますので、この試験については、必ずしも全国統一の試験内容を定めて、それで統一的に行っているということではございません。


 それから、この試験はいわゆる司法書士試験のように全国統一的に一つの機会に行うということではなくて、個々の申請ごとに、その個人個人について、今申しましたようなその人の職歴等にかんがみて、さらに、この程度の試験を実施するのが適当であるという判断のもとに試験を実施して

いるということであります。



金田(誠)分科員 非常にわかりづらいのですが、例えば私が認定を受けたいと思って申請をすると、私の職歴などを精査されて、この人は試験が必要だ、あるいは試験は必要でないと、一人一人についてその判断をするということでしょうか。



濱崎政府委員 御案内のとおり、裁判所事務官、書記官あるいは法務事務官等の職務に10年以上従事している者、これがその資格者の中心でございますけれども、運用といたしましては、10年の職務ということだけでは、一般的に言って、必ずしもその業務を行うに必要な知識、能力を一般的に有しているとは判断しがたいというようなことで、これは内部的なものでございますけれども、それよりもう少し厳格な経験年数あるいは職務の内容といったものでもって運用をしております。


 その上に、今申しましたような方法で、その方の職務経験を基準にして、この人についてはどういう試験を補充的にするのが適当かという個別の判断に基づいて試験を行うということでございます。


 御案内のとおり、司法書士の業務というのは、業務内容は幾つかございますけれども、何といっても登記事務というのが業務内容の中心でございます。


例えば、その登記事務に長年従事していて、その職務の内容も司法書士業務と業務内容、仕事の内容において非常に密接な関係がある、そういう職務に極めて長い年月従事して、その十分な職責を全うしているということになりますと、登記の実務というようなことについてはとりわけ改めて試験する必要がないのではないかというような場合もございます。


 そういう場合に、しかしながら、実体法の点についてはさらに一定のテストをするということが必要だ、そういうことでございますので、それぞれの職務経験に応じた必要な試験を実施しているということであります。



金田(誠)分科員 どういう職種の場合はどういう試験をする、どういう前歴の場合はどういう補充試験をするというようなことを書いた内規といいますか、要綱といいますか、そういうものはございますでしょうか。


 それと、あわせてお聞かせいただきたいのですが、実は、昭和53615日の参議院法務委員会での政府委員、香川保一様というのでしょうか、この方の答弁でございますが、

 この試験は法務大臣が行う試験でございますけれども、実際は法務大臣から一応法務局長に委任してやらせるというふうなことを考えておるわけでございます。ただ、現在も同じでございますが、ばらばらにやったのでは不公平になりますので、したがって、本省で問題をつくって、それで、各実施は地方法務局でやってもらうというふうなことを考えておるわけでございまして、

これが特認に当たっての質疑に対する答弁でございますが、今の御答弁とこの昭和53年の、これは司法書士法の全面改正のときの委員会でございますけれども、全く食い違っておるのではないかと思いますが、いかがなものですか。



濱崎政府委員 御指摘の当時の香川民事局長の答弁にございましたように、法務局、地方法務局長に委任して行っている、最終的には法務局、地方法務局長の判断によって行っているわけでございます。


現実の問題といたしましては、いろいろな事務連絡等におきまして、各法務局でアンバランスが生ずることがないようにということについては十分協議をし、法務省の考え方を伝達しております。


 それから、試験問題の内容につきましても、今申しましたように、その受験資格申請をされる方によって必ずしも同じ試験をやっているわけではございませんけれども、試験問題につきましては、ある程度事務連絡という形で一定の統一がとれるような配慮をしているところでございます。


 そういう意味で、当時の答弁と基本的に食い違っているとは思っておらないところでございます。(金田(誠)分科員「内規の関係」と呼ぶ)御指摘のような内規基準はつくっておりません。



金田(誠)分科員 前段御説明いただいた特認者の試験のあり方とこの答弁と食い違っておらないという再度の御答弁だったのですが、そういうことでしょうか。


 昭和53年には、この試験は法務大臣が行う試験でございますけれども、実際は法務大臣から法務局長に委任してやらせるというふうな考えです。


不公平になりますので、したがって、本省で問題をつくって、それで、各実施は地方法務局でやってもらう。


 これは全国一律のものでなければまさに不公平になるわけで、その試験の期日も、期日をずらしてアトランダムにやられていたのでは、例えば試験問題が漏えいするということも十分にあるわけでございまして、これはいかがですか。


 この昭和53年の御答弁の趣旨と今現実に行われているということとは全く違っているというふうに思うのですが。



濱崎政府委員 試験の仕方というのは、これは正規の司法書士試験のように法律できちっと決まっているものではございませんので、その資格、一定のやり方というのが不動のものとして確定しているわけではございません。


 この試験をどういうふうにやれば一番適切かということは、私ども司法書士制度を所管する立場においては日々考えているところでございまして、一時は、今御指摘のあったような全国統一問題というようなことで実施した時期もあるやに承知しております。


しかしながら、先ほど申しましたように、いろいろな職務経験、それから試験の成績を総合して判定するという観点からいいますと、必ずしも統一的な試験をするというのは実情に合わないということも考慮いたしまして、今申しましたような運用をしているわけです。


 それから、試験問題の漏えいという観点から申しますと、それはどういうやり方をやりましても漏えいの危険性というのはあるわけでございますけれども、そういう統一的なやり方をやるという場合とそうでない場合というので漏えいの危険に基本的な違いがあるというふうには考えておらない。


そういうことについては、もう厳にそういうことのないようにということで、徹底してやっているつもりでございます。



金田(誠)分科員 恐らく検事さんの資格をお持ちだと思いますが、そういう御資格の方がお答えする内容ともちょっと思えないような御答弁で、面食らっているわけでございますけれども、ちょっと角度を変えてお尋ねいたします。


 平成4年度が347人、5年度が247人、こういう特認者があったということでございますが、それでは、それぞれ特認を希望された方は何人ずつおりましたでしょうか。



濱崎政府委員 申しわけありませんが、その数は今調査しておりません。



金田(誠)分科員 この特認希望というものは、それではどういう手続で希望者は名のりを上げることができるのでしょうか。


内規か何かは本当にないのですか。一定の勤務基準、これこれに当てはまった者で、あるいはその他の要件がこれこれあれば特認の希望を申し出ることができる。


申し出た場合は、これこれこういう前歴の者はこういう試験、こういう前歴の者はこういう試験、これこれのものをクリアすると特認になれるという客観的なものはないのですか。



濱崎政府委員 申請するについて一定の要件というものは定めておりません。もちろん法律上の要件がございますから、これに達しなければ認可されないということは客観的にも明らかでございますが、それ以上の申請の要件というものは定めておりません。


 ただ、先ほどもちょっと申しましたように、これは試験の結果の公表の問題と同様でございますので公表することは差し控えさせていただきますが、要するに合否の判定の基準として一定の内部的な判断基準、これは試験の合否の決定の基準と類似、同性質のものかと思っておりますけれども、そういうものは運用上の基準としてございます。


 そういうことで運用してきておりますので、申請される方もおのずから、過去の認可された人、されなかった人の経歴等考え合わせてある程度の、おおよそのことを承知しておられるという実情はあるかもしれません。


しかしながら、申請に当たって要件を課するということはしておりません。



金田(誠)分科員 特認された人の数は先ほどわかりましたが、されなかった人の数はわかりますか。



濱崎政府委員 これは、申請されて取り下げをされるという方も実際にかなり多くございまして、そういう数については実は民事局の方で全法務局分を集約しておりませんので、申請したけれども結局不合格になった、あるいは取り下げたという人の数は承知しておらないわけでございます。



金田(誠)分科員 申請を受けて、個別の判断プラス試験ということで合否を決めて、合格者何名、その他何名ということを本当にやっておられるのですか。


その地方法務局長なりどなたかの権限で恣意的に決めておられるのではないですか。



濱崎政府委員 これは今申しましたように、取り下げられた分については本省に上がってまいりませんけれども、認可相当あるいは認可不相当ということで最終決定をするについては、これは必ず本省に上がってくるわけでございまして、本省においてその人の職歴、それから試験の結果というものをチェックをして最終的な判断をするわけでございますので、現場でそういった手心を加えるということはできない仕組みになっております。



金田(誠)分科員 認可不相当だった数は、それでは本省でわかるのではないでしょうか。



濱崎政府委員 認可不相当の数、大多数がそういうことで取り下げになる場合が多いわけでございますが、最終的に認可不相当という判断をした件数は今承知しておりません。調査すればわかるかもしれません。



金田(誠)分科員 認可不相当という数はあるのですか。認可不相当にするという者は出させないで、取り下げさせて、初めから認可に相当する者だけを申請させて全部認可する、こういうことじゃないですか。



濱崎政府委員 御指摘のとおり、そういう運用をする場合が多うございます。しかし、全くないということではなかろうと思っております。



金田(誠)分科員 といいますと、申請取り下げということになりますと試験もやらないということだと思いますが、したがって、あらかじめ認可する者の固有名詞というのは全部決まってしまっていて、その申請だけ出さすというようなことなのでしょうか。



濱崎政府委員 結論的に申しまして、決してそういうことではございません。


 それから、申請された者について試験をした結果これは難しいという場合に、御本人が不合格といいますか、不認可といいますか、そういう判断をもらうよりは、それは取り下げたいということで取り下げられる場合がほとんどである。


むしろ、大多数の申請者の方がそういう取り扱いを希望されるということからそうなっているわけでございます。


初めから基準に合致しないからテストも受けさせないというようなことはございません。



金田(誠)分科員 問題は、その取り下げ者なるものがどの程度の数にそれぞれ上っているのかがわからないと、どれほどその公正な平等な運用がなされているのかというのはちょっとわからない気がいたしますが、取り下げ者の数というのは調査いただけますでしょうか。



濱崎政府委員 これまでそういうことで、そういうものの数を把握するように法務局、地方法務局の方に指示しておりませんものですから、大変申しわけございませんけれども、ちょっと難しいだろうと思います。



金田(誠)分科員 認可を希望する方々はどのように申請をするということを知らされるのでしょうか。


これこれこういう要件を満たした者は認可申請することができますから、いついつまでに申請書を出してください、こういう通知か何かのあるものでしょうか。



濱崎政府委員 これは、資格を有する方はいろいろな職場におられるわけでございますので、特にそういう資格を有する方に対してこちらから連絡をする、通知をするというようなことはいたしておりません。


あくまでも当事者の方でこういう制度を承知せられた上で申請をされるということでございます。



金田(誠)分科員 特認の申請手続の書類というのはあると思いますが、その様式などは決まっているものでしょうか。



濱崎政府委員 様式は決まっております。



金田(誠)分科員 その様式はどういう要綱とか内規とかに基づくものですか。



濱崎政府委員 それは、この様式については特に法令上の規定があるわけでございませんので、これは法務大臣、それを具体的に処理します私どもの方で相当な方式ということで決めさせていただいているわけであります。



金田(誠)分科員 特認者の数は、先ほど347247というのはわかりましたが、その前歴、法務省出身あるいは検察庁であるとか、あるいは裁判所であるとか、この法にはいろいろ前歴の基準があるわけでございますが、その他というのもございますけれども、それを調査したものがございますでしょうか。


この数の内訳。



濱崎政府委員 認定者の出身庁別の統計というものはとっておりませんので、その詳細な数字は出しておりません。


ただ、一般的に申し上げますれば、出身母体としては多くの部分が法務事務官でございまして、その他裁判所、検察庁等の職員も相当数認定を受けているということでございます。



金田(誠)分科員 特認の方でなくて、今度は試験の方でちょっとお聞かせいただきたいと思うのですが、司法書士試験の採点は何点満点ということになっているのでしょうか。


第一次、第二次、それぞれお聞かせいただきたいと思います。


 それと、合格者の最高点と最低点は。


それぞれ最近の例で結構ですが。



濱崎政府委員 これはどの国家試験も同様かと思いますけれども、司法試験の合格の点数というものを満点幾ら、最低点幾らというような形で公表するということはいたしておりませんので、その点についての御答弁は御容赦願いたいと思います。



金田(誠)分科員 特認の関係ですが、御説明ですと、試験のあり方も本当に理解できないような形で行われているようでございます。


それから、特認の該当者はどういう方が該当になるのか、どういう前歴であればどういう試験を要するのか、これもわからない。


あるいは何人受けて何人却下されたのか、これもわからないようでございます。


疑ってかかるわけではないのですが、法務省の職責からいいますと、法のもとの平等、すべて同じく取り扱われる、機会均等といいますか、御自分の内部でぜひそういう形を実施していただきたいものだ、こう思うわけです。


 今までの御答弁ですと、かなり恣意的に運用されているのかなという疑いを持たれてもしようがないようになっているようでございますが、今後に向けて、ひとつ大臣いかがでしょうか、もっと公明正大、開かれたものにしていくという方向でぜひ御努力いただきたいと思うのですが。



中井国務大臣 今金田議員の御質問をずっと聞かせていただきまして、私もちょうど一年生議員のときに法改正がございまして、自分でもそれなりに走り回ったことを思い出しておりました。


訴訟制度やら登記事務やらをお支えいただいて、国民生活にとって切り離せない本当に大事な司法書士の制度でございます。


 同時に、議員のお尋ねの流れから言えば、一般国民の試験は大変難しいではないか、大体23%、400人ぐらいしか合格しない、それを特認のゆえにぱっぱか無原則にやっているのではないかというおしかりであろうか、このように察知をさせていただいておったところでございます。


 税理士さんなんかを見ますと、税理士さんの場合も特認がありますが、これは試験がない、こういう制度との兼ね合いもあろうか。


しかし、法制定当時の国会での御質疑やら、私の勉強不足のところもございますので、一度詳しく事務方から事情、状況を聞きまして検討させていただきたい。


 そして、いやしくも後ろ指を指されることのないように、また、特認で司法書士さんにおなりになった方が、これまた変なやゆや後ろ指を指されることのないように、毅然たる対応で、プライドを持って職業についていただけるように検討させていただきたい、このように考えます。



金田(誠)分科員 ありがとうございます。よろしくお願いしたいと思います。


 問題は、特認者と一般の試験で受かってくる方、こういう両者の問題もあるわけでございまして、ただ、特認で入ってくる方がそれなりの知識、経験を有して、どこから見ても当然であるということが明らかになれば問題はないわけでございますから、ぜひ試験制度、任用制度、特認に当たっての基準等を公にしていただいて、信頼感を高める、違和感を持たせないように、そういう方向で御努力、御検討いただきたいということが一つ。


 もう一つは、同じような職歴、経験等を有する方で、特認される方とされない方、それの使い分けが、まかり間違っても例えば労務管理上に使われるとかそういうことであってはならないわけでございまして、ぜひそういうことがないようにという意味も含めて、ひとつ特認制度の公開的な運用といいますか、制度の確立といいますか、それは以前も委員会の中でかなりそういうことが述べられているわけでございますから、ぜひそうした形に基づいて改善を図っていただきたいということをお願い申し上げまして、終わりたいと思います。


 ありがとうございました。