H14/04/18 参議院 法務委員会



福島瑞穂君


vs


法務省民事局長  房村 精一君

国税庁次長    福田  進君






福島瑞穂君 


 では次に、特認制度についてお聞きをいたします。


 司法書士試験が国家試験となった昭和54年以降の司法書士資格取得者の事由別割合、国家試験、大臣認定について教えてください。



政府参考人(房村精一君) 昭和59年以前の統計がないものですから、昭和60年から平成13年までで申し上げますと、この間に司法書士となった者のうち司法書士試験に合格した者が約69%でございます。


それから、法務大臣により認定された者が約31%でございます。


 なお、ちなみに、平成14年の44日現在の司法書士の全国の会員数が17199名で、そのうち特認を受けた会員数は3009名という具合に日本司法書士会から聞いております。



福島瑞穂君 特認制度が、大臣認定で認められる司法書士の割合が31%というのを多いと見るか少ないと見るかは人によって様々かもしれません。


 ただ、私自身は、業界の地位向上ということであれば、特認制度で認められるよりはやはり一律に試験などで認められるという、国家試験合格者の数を増やしていくべきだ、要するに特認制度というのが、悪い言葉で言えば、ちっちゃな天下りということになりかねないので、この31%という数字は実は非常に高いのではないかというふうにも思っております。


 特認制度は将来的には廃止をする必要があるのではないか。副検事、検察事務官と司法書士の仕事の関連性というのはあるのでしょうか。



政府参考人(房村精一君) まず、一般的に特認制度の趣旨でございますが、これは、法務事務官等、職務に長年従事したということによりまして培われた知識及び能力、こういうものを社会的に活用しようということから特認の制度を認めているわけでございます。


 特に、登記に関して申し上げれば、もちろん司法書士の方々は試験を受けて適切にその事務を処理していただいているわけでありますが、登記所においても、新たに入った職員については、それぞれ必要な研修等を加えつつ、その法律的な事務処理能力の向上を図っているところでございまして、そういったことで、長年経験をして能力を身に付けたということであれば、その能力を社会的に活用するということにはそれなりの意義があるだろうと思っておりまして、今後ともこの特認制度を維持していくべきものと考えております。


 御指摘の副検事、検察事務官でございますが、これは司法書士の職務として検察庁あるいは裁判所に提出する書類の作成ということも業務に入っておりますので、その限りで全く関係がないわけではございませんし、こういう方々は法律的な事務を職業として行ってきたわけでございますので、その一定の能力に達している方であれば、司法書士としてやはりその能力を振るっていただくということが相当ではないかと思っております。



福島瑞穂君 長年、能力を持って働いてきて、それを社会的に役立てたいというのであれば、試験を受けてなるべきではないですか。



政府参考人(房村精一君) 試験といいますのは、基本的に能力を大勢の人に関して判定するために最も能率的な方法ということでこれが取られているわけでございますが、ただいま申し上げたような、現実に例えば登記の事務処理を行っているということであれば、その職員の登記の事務処理に関する能力等は十分見極めが付いているわけでございますので、これを改めて試験をするまでもなく認定ができるということがそもそもこういう制度の基本的考え方ではなかろうかと思っております。



福島瑞穂君 能力が客観的に明らかであれば、試験にすればもっとはっきりするじゃないですか。


能力があるんだったら試験を受ければいいわけで、ごめんなさい、だから試験を受ければいいという言い方もちょっとひどいんですが、例えば弁護士事務所でも、秘書や事務の人たちは登記の手続などもやってくれたり、能力が高い人もたくさんいます。


でも、その人たちは試験を受けて司法書士になりますし、現在、司法書士は非常にやはり難しい試験になっています。


 もちろん、実務をやってきた人たちの能力が高いことはよく分かりますし、認めます。


でも、そうであるならば、私は試験はすごく残酷、形式的なようで、恨みっこなしで単一的だというふうに思うんですね。


ですから、きちっと特認制度みたいなバイパスをいろんな制度で認めるのではなく、試験やっちゃえばいいというふうに思うんですが、いかがでしょうか。


能力があればほとんど通られるんじゃないでしょうか。



政府参考人(房村精一君) その点は繰り返しになりますが、やはり実務において磨いた能力というものを直ちに活用していただくという趣旨で、それなりにこちらも特認を認める職員については内規等を作って、単純に何年いればということではなくて、それなりの経歴を踏んだ、経験を積んだ人を認定しているわけでございますので、その点をあえて試験を受けさせるまでのことはないのではないかという具合に考えているところでございます。



福島瑞穂君 例えば、公証人についても、試験をやると書いてあって一度も試験を行ったことがないと。


今、やはり国民の目は厳しくなっているので、公務員の優遇策みたいなことはもうこれから維持できないんではないかと。


 要するに、さっき試験が難しいという声もありましたので、試験をどうするかという問題はもちろんあるわけですが、本当に公平に試験をやって、それで試験の中身についてはいろいろ改革をするなり、それはあればいいと思うんですね。


でも、公務員については、長年勤務したということだけで優遇するというのはもう理解を得られないんじゃないかと考えますが、いかがでしょうか。



政府参考人(房村精一君) 長年勤めただけで認めているわけではございませんで、それなりに当然、公務員の場合には研修等で能力を身に付けてもらうという機会を与えると同時に、日ごろの勤務ぶりを見つつ、能力のある人間についてはそれなりに責任のあるポストに回すという形で人事管理が行われております。


 そういう形で、長年掛けてその能力が実証された者を特認として認めていくということで運用をいたしているわけでございますので、確かにそういう、それなら試験受ければという御意見はあろうかと思いますが、私どもから見ればそれだけ時間を掛けて能力の判定をした上で認定をしておりますので、あえて試験を受けさせるまでのことはないのではないかということでございます。



福島瑞穂君 いや、試験でやった方が一律で、非常に簡単で、勤務成績がいいから試験なくていいというのは、ちょっともうどうなのでしょうか。


いや、もちろん、試験をやればほとんどそれだけおっしゃるように優秀であれば通られると思うので、と思います。


 それで、続けて税理士の特認制度についてお聞きをいたします。


 税理士の、税理士試験を受けてなる人と、それから税務署の職員として働いてきた人の割合、パーセンテージを教えてください。



政府参考人(福田進君) お答え申し上げます。


 税理士資格の取得事由には、今、先生御指摘のように、税理士試験合格、税理士試験免除のほか、弁護士、公認会計士資格取得があるとか、昭和26年の税理士制度創設以降、資格取得制度の改正が行われておりますので、なかなかその把握は難しいわけでございますが、一つの見方といたしまして、平成133月末現在、税理士として登録をされている者のうちで、短期間でも職員であった者で、その後試験を受けられたり、あるいは弁護士になられたりとか、そういった者を含んでおりますが、いずれにしても元国税職員の占める割合は37.6%ということでございます。



福島瑞穂君 税理士試験に一本化するということはいかがでしょうか。


要するに、税務署の職員を長くやっていれば税理士になれるわけですよね。


ですから、その特認制度についての見直しについてはいかがでしょうか。



政府参考人(福田進君) 今、先生御指摘の、国税職員が税理士となるために必要な学識や応用能力を有していると認められまして、税理士試験の試験科目の全科目を免除されるためには、国家公務員の採用試験に合格し、職員として採用された上で、23年以上の実務経験、それから監督的職務への5年以上の在職、並びに国税審議会の指定した高度の研修の修了、こういった要件を満たすことが必要でございまして、ただ単に勤務していればいいということではございませんで、一言付け加えさせていただきたいと存じます。


 今申し上げましたように、行政の専門実務家に対しまして、その実務経験を通じて得られる知識を尊重して、その分野における資格取得に必要な試験の免除を認めることは、今御議論されておりますように、例えば弁理士、行政書士など、我が国の他の公的資格、あるいは主要国の職業専門家にも多く見られるところでございまして、私は、その考え方自体十分な合理性があると認められているのではないかというふうに考えております。



福島瑞穂君 ただ、税理士会も司法書士会もそうだと思うんですが、試験を受けてなった人と、それから公務員をやってその業績の結果なっている人との間の溝というのはあると思うんですね。


しかも、公務員で長年やって、もちろん優秀で能力を発揮されてきたというのはよく分かりますが、やはり基準が分からない、はっきりしない。


私自身は、優秀でその問題についてプロであるのであれば、やはりきちっと試験を受けて入ってくるという方が、業界全体の透明性を高めるとか、格上げということには役立つというふうに思っております。


 ですから、是非、税理士の特認制度について今後検討の余地はあるのでしょうか。お願いします。



政府参考人(福田進君) 繰り返しで恐縮でございますが、行政の専門実務家に対しまして、資格取得に必要な試験の免除を認めること、これ自体合理性があると認められていることを御理解願えればと存じます。


 いずれにいたしましても、税理士について申し上げますと、税法も会計制度も御案内のように年とともに改正されておりますので、試験の合格者であれ免除者であれ、税理士の方々は実務経験と自己研さんを通じて常に税理士としての使命を果たされているものと私どもは承知しております。



福島瑞穂君 特認制度については、本当に公平なのかどうかということについて、今後も是非検討をよろしくお願いします。


 土地家屋調査士の特認制度はどうなっているでしょうか。



政府参考人(房村精一君) 土地家屋調査士につきましても特認制度は認められておりますし、今回の法改正でもその点について別段の変更は加えておりません。



福島瑞穂君 何年やれば土地家屋調査士になれるのでしょうか。



政府参考人(房村精一君) 法律上の規定としては、10年間勤めればということになっております。



福島瑞穂君 10年きちっと働いてきたという業績は分かるんですが、今どこの資格試験もとてつもなく難しくなって、希望が非常に多いと。


そうすると、若い人から見れば、公務員になったら割とバイパスで入れるみたいな、それは長期的に見て業界全体にとっても実は良くないと思いますし、もう少し透明、公平、一律、画一、きちっと研修もやりというふうに思います。


是非、今後この点について再考していただけるようにお願いいたします。


 それで、土地家屋調査士について、表示に関する登記のうち申請義務を課している手続に要する報酬の基準などについて、公共性を踏まえた上で分かりやすい方がいいのではないかと。