S31/03/12 参議院 法務委員会


 

○小林亦治君 全国の、司法書士の場合なんですが、数が非常に多いのであります。

一万二千七百五十何名で、弁護士の数は約この半分と記憶しております。六千名くらいですか、ただ東京だけがわずかに千三百三名。弁護士の数よりははるかに少い。

これと対比して考えてみまするに、この法案の第二条の資格要件なんですが、非常に簡単にできておることとつけ合せて考えてみまして、一体これほどたくさんの数がいるということは、需要に対して多過ぎはしないか、こういうことなんです。それから門戸開放があまり簡単過ぎて今日の国民の教育水準によっては大がいの者はこれはやろうと思えばなれる、第二条の資格くらいは。これは第一号はともかく第二号の資格をもっている者はたくさんいるんですから……。

こういう点についてやはり国民に対する特別な知識をもって協力する職業なんですから、もっと資格要件を厳格にするということと、数をむやみにふやさないように、何かそういう配慮がありますかどうか。

これはむしろ法務当局の方からでも伺えばけっこうだと思います。


 

○委員長(高田なほ子君) 法務省から平賀参事官も参っておりますから、法務省側の御答弁をお願いいたしましょう。


 

説明員(平賀健太君) ただいま御質問のように、従来におきましては資格要件が比較的軽くございました上に、さらに現行法のもとにおきましては地方法務局の監督ということが十分に行き届きませんために、どちらかと申しますと野放しと申しますか、そういう傾向がなきにしもあらずであったのでございます。非常に数がふえてしかも監督は十分にできないという傾向にあったのでございます。

今回の衆議院におきましては、提案されましたこの法律案によりまするというと、司法書士につきましても土地家屋調査士につきましても、それぞれ資格要件を三年とあったのを五年、あるいは二年とあったのを五生というふうに引き上げてありますとか、さらに司法書士につきましては従来選考ということがはっきり法律の規定には出ていなかったのでありまするが、第四条の改正でもって選考というのをはっきり入れまして、従来は司法書士法の第二条の第一号に該当する人々につきましては選考ということはやらない建前になっておったのでありますが、これもやはり司法書士として適格であるかどうかということを選考するということになっておりますので、従来のような弊害は相当除去できるのではないか、こういうふうに考えます。

○小林亦治君 それならばですね、今回のこの法案の第二条第一項第一号なんです、「裁判所事務官、裁判所書記官、裁判所書記官補、法務事務官又は検察事務官」と、こうありますが、弁護士の事務員はここに何にも考慮されていないんです。

の法曹交流あるいは一元化の点で弁護士もこれは同等に取り扱ってきているのですが、弁護士の事務に関する点については何ら考慮が払われていないようでありますが……。

 

○衆議院議員(高橋禎一君) その点につきましては当然資格を与えるというふうには考えておりませんですけれども、第二条の二号に、「前号に掲げる者と同等以上の教養及び学力を有する者」、これを選考して認可すると、こういう立場をとっておりますので、法律事務所等においてこの方面の御勉強なさった方はこの二号に当ってこの職につき得る道が開かれておる、こういうふうに御了承願いたいのであります。

○中山福藏君 関連してちょっと……、ただいまのととろは大へん全国の弁護士の事務員に大きな影響のある点だと思うのですが、その点をもう少し明確にこの法案に打ち出すというお考えはありませんか。

これは大へんに影響のある大きな問題だと思います。

これはあなたの今御解釈のように簡単になかなかいきませんよ。

もう少し明確化するという必要があるのじゃないですか、御意見を承わりたい。


 

○衆議院議員(高橋禎一君) 先ほど申し上げたように、弁護士の事務所、すなわち法律事務所において実務に当られた方、そういうのを特に裁判所事務官、裁判所書記官等と、すなわちこれらの官職にあった人たちと同じように取り扱っておらないわけでありまして、先ほど申し上げた実力のおありの方は第二号に該当するものとしてその選考を得て認可されるということによって十分目的は達成できるのだと、こういうふうに考えておるわけでありまして、従って、特に法律事務所に勤務しておられる方々を特にどう取り扱うかということは法案には表わしておらないわけでございまして、そうしてこれによって十分この法律の目的は達し得ると、こういう見解に立っておるわけでありますから御了承願います。


 

○中山福藏君 これは考え方が非常に古い官僚主義の私は考え方じゃないかと思うのです。

いつでもこの官界の法律事務に携わっておる人に対していわゆる特恵、特別の何ですか、待遇をするというような考え方は、これは一応やはり法案の上にもこういうことは差別を撤廃して明確化するということは必要であろうと思うのです。

特別選考の場合はこれは一般人のうちから選考するということでいいんだろうと思いますけれども、そういう点についてはもう少し広くお考えになる必要があるのじゃないでしょうか。


 

○衆議院議員(高橋禎一君) この立案者側におきましては決して官僚的な気持を持っていたわけではございません。

ただ第二条の一号にいわゆる官職にある人たちを列挙いたしました。

そうしてこれに一定の年限在職しておることによって一つの資格を認めますということは、裁判所事務官にしましても、あるいは書記官等にいたしましても、やはり今の制度からいたしますと、一定の試験を経てここに至っておられるわけであります。

すなわち、公務員を採用するだけの資格を持っておられる方々がここに入ってこられるわけであります。

ところが、法律事務所に勤務される方々にはそういったような資格というものを法律上認めておらないわけでありますから、そこにやはりむしろ差異を設けた方がほんとうのこの教養、学力のある方をこの職につかせるということにおいて妥当である、そういうふうに考えたわけでございます。


 

○中山福藏君 もう一つその点についてお伺いしたい。

なるほど一定の資格があるということは私もよく存じておりますが、しかしこれは検事局に勤める人と、民事裁判所に勤める人と、刑事裁判所に勤める書記官なんかの立場を考えてみますと、これはその方に専念しておりますというとその方に偏向するのですね、自分の知識というものは。

ところが弁護士の一般法律事務に携わっております者は、刑民双方に通暁していくというこれは特色があるわけです。

だからその頭がへんぱになった者が資格があって、一般的に通暁している者がうしろに持っていかれるというようなことは、これは考え方が私は平衡を失っていると思いますが、どうですか、この点は。


 

○衆議院議員(高橋禎一君) 裁判所事務官、あるいは書記等の公職にあられる方は先ほど申し上げたように一定の資格を持ってそうしてその事務に従事しておられる。

しかしお説のごとくやはり仕事の内容によってはへんぱな方もおありであるということも一応考えられるのでありまして、従いまして現行法を改めて、一応長の選考によって認可をすると、こういうふうにいたしたわけでありまして、すなわちこれらの公職にあった方々が当然司法書士等になられるというのでなくして、やはり一つの選考というものを経るようにしてそこを是正して参りたい。

それから弁護士事務所に勤務していらっしゃる方々につきましては、先ほども申し上げましたように、実力がおありの方はこれに準ずる者として第二条の第二号によって十分にその職につき得る機会が与えられるものである、そういうふうに考えておるわけであります。

すなわち、公けの担保のある人とそうでない人とをここで区別した、こういうわけでございますから、そのように御了承を願いたいと思います。

 

○中山福藏君 ちょっと提案者にお伺いしますが、この司法書士法の改正、あるいは土地家屋調査士法の改正ということについては、二年あるいは三年という実地の体験を持っていなければいかぬ、それを今度は拡大して五年……両方とも五年だろうと思うのですが、そういうことにしてあるわけです。

これは近ごろよくはやりますのでね。既得権を得たというような団体の人々は、できるだけ門戸を狭めて一つ自分なんかの地位を擁護していこうというような傾向を帯びておる社会の情勢にあると私は見ておるのです。

そこで本年度の予算をごらん下さいましても、二十五万人も新しく就職させるというような、昨年度に増して三万人というようなものを、吸収力を増しておるというようなことまで書いてある、できるだけ失業者がないように取り計らわなければいかぬという国家の大方針というものと、ある意味においてこういう門戸を狭めるということは、失業者を多数に出すという意味にもなるのじゃないかと思います。

そこの調節というものがこういう法律案を作るときには一番大切じゃないかと考えております。

私どもはなるほど選挙によって当選さしていただいておる。

有権者の方々にはまことにありがたい気持で対しておるのですが、国家本位に働け、国民全体の代表ということからこういう問題も取り上げてやはり厳格にこれは審査していく必要があると私は見ている。

それでこの法案を見て、二年の体験を得られた方は、自分がその資格がなかったという自覚の上に立たなければこの改正案というものは出さないわけですね。

それで、二年で資格を得られた方は資格があって、これから先は五年たたないと資格が得られないというこの矛盾の点をもう少し明快に御説明を承わりたい。


 

○衆議院議員(高橋禎一君) 私どもは、前にその資格を得ておられる方々、すなわち既得権者のみを擁護して、そうしてこれから新しくその道に入ってこようとされる方々の門戸を閉ざすと、そういったような意図をもってこの法案を考えたわけでは決してないのであります。

申し上げるまでもなく、例を司法書士にとりますというと、何と申しましても他人の嘱託を受けて裁判所、検察庁、または法務局もしくは地方法務局に提出する書類を作成されるわけであります。

この書類の作成ということは一面において民事、刑事にわたり国民の権利義務に重大な関係を持っておりますので、そしてまた裁判、検察、法務行政の公正迅速の運営にも関連がありますので、その質をできるだけ向上さして、そうしてその職責を十分果していただくようにしていきたい。

その程度をどの辺に求めるかということにつきましては、現在の諸般の実情から見ましてこの法案の程度にすることが適当であろう、そういうことを考えまして立案いたしたわけでございます。

私は先ほど小林委員から御心配のありましたような点、それに対して法務当局からも御答弁がございましたが、あの趣旨を十分考え、そして実力のある方々には決して門戸を閉ざすものでない、こう考えまするし、それから既得権を持っていらっしゃる方々は、御説のような点につきましてはいろいろとその後実務に習熟していらっしゃいますし、なおこれに対してこの法案で考えております司法書士会、あるいは土地家屋調査士会に強制加入ということにし、さらに全国的な連合会をも組織して互いに切磋琢磨して参りますところにこれまで職についていらっしゃる方々は十分その責任が果せるのだ、そういうふうに考えておるような次第でございます。


 

○中山福藏君 あなたのおっしゃることはよくわかるのです。

そういうふうに説明しなければこの法律の改正案はこれは成り立ちませんよ。あなたのように説明しなければ成り立たぬ。

しかし一歩退いて冷静に厳格にこれをいろいろと検討してみますると、なぜ二年のものを五年に幅を広げなければならぬかという、その二倍以上の、二倍半という幅の延長はあまりにひどすぎるのじゃないか。

二年の人が今まで仕事をして、自分の力というものはなるほどすべての法律事務を処理していくに不足だという自覚の上に立たなければこの改正法律案は出せないわけですね、これは論理から言って。

それを二倍半にこれを延長されるということが私はあまりにとっぴな考え方じゃないかという気もするのですが、さればと言ってこれは既得権者の方々の権利を剥奪しようなどという乱暴なことは言いませんよ。

しかしながらどうもその点合点がいかぬのですね。

そういう二倍半にこれを延長するという理由はどこにあるのですか。

二年の体験を得た人が今までずっとやってこられた、それを二年を四年にするのならともかくとして、それを五年にするのはどういうわけですか。

それはあなたがおっしゃるようにすべて他人の権利義務関係を処理する者はむしろ五年より十年体験せられた方が、私はその方が適切だと思っております。

十年の上に二十年の経験をやったらさらにけっこうでしょう。

しかしながら二年体験を得られた人が今日まですでに処理して来られた。

それをさらに二倍半に延長するということはこれはやはり一つの門戸を締め切るような感じもしますが、私は今までの方々に対してはやはりけっこうその事務というものはやっていけるものだと思う。

あなたの今言われるように弁護士の連合会に入れとか、司法書士会に入れということは私も弁護士だからよくわかる。

よくわかっているが、しかしそれとこれと結びつけての御説明では納得がいかぬ。それでは問題が違うと思う。

二年のものを二年半、三年に延長されるというのはどういうわけですか。


 

○衆議院議員(高橋禎一君) おっしゃる通りこの年限は三年というのを五年に改める、そんなに大幅に改正をしないで、三年半くらいにし、あるいは四年にし、というようなお考え方もあり得ることと存じますが、私の方で立案いたしました当時の意見といたしましては何といたしましても裁判、検察一般の司法事務というものが複雑化して参っておりますような実情からみまして、そうこの法律がしょっちゅう改正すべきものでない、法律にはやはりある程度安定性を持たせることが必要だというような考え方から今日まで改正のなかった法律をこの際改正するとすれば、案にありますような年限の実務に従事される、こういうことが必要であるという、そういう考え方に立ったわけでございます。


 

○中山福藏君 もう質問いたしません。

私予算委員会の方へ参りますから、これで一つよろしくお願いいたします。


 

○委員長(高田なほ子君) 他に御質疑がなければ、両案とも御質疑が終了いたしたもの認めて御異議ございませんか。


  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○小林亦治君 私も本案には賛成でありますが、ただ一つ申し上げておきたいことは監督権の問題なんです。

かような会あるいは連合会、ある種の業務についてかようなワクを設けまするということになりますると、行政書士、それからあるいはその他の特殊な書士を有するところの職業団体がどんどん会を結成し、連合会を組織し、一つの、まあ強く申し上げますれば特許的なそういったもののグループを作りやすい。

作ることはまことにけっこうであり、社会正義の上からも、国表機構の上からもきわめて私は不賛成ではありません、むしろ賛成でありますが、とかくそういった会に対して自治権をまかせるあまり、監督権というものは及ばない。

そういうことになりやすい実例をたくさん知っておりますが、監督権を十分にしていただきたい。それから中山委員とはあるいは意見が反対かもしれませんが、失業者を救済するのあまり門戸を開放しすぎても、この種の業務に対しては、これは逆効果である。むしろ私の方は今後より厳選しなければならない。

数もすでに弁護士の倍を上回る一万二千というのが全国におるのです。かように私はたくさん要らないと思う。

と申しまするのは、これはある地方の実例なんでありますが、自転車に乗って御用聞きをして歩く司法書士があります。

それからたのんでも、これはちょっと研究しなければならぬから、預かっておくといったようなことで三日も四日も代書の委託を受けながら、机の中にしまっておいて、簡単なことでも方々聞き回ってようやく官庁の窓口に出すといったようなお粗末な司法書士があるのであります。

これは現にあるのであります。

そういう点を考えてみまするというと、かようなりっぱな整備法ができるチャンスをねらって門戸をぐっと引き締めて、地位と内容を高むるの考慮がなければならないのであります。

そのためには自治権を、会あるいは連合会にまかして自後の監督をよほど厳にしていただかないと、特許権を与えて内容のしまらないものをたくさん作るということの弊に陥りやすいのでありますから、当局は十分この点に御留意下すって、こういう会ができ、連合会ができたら、ますます地位も高まり、信頼も厚くなったというふうに発展させていかなければ、植えっぱなしという弊になりやすいのであります。

その点を十分御留意いただくことを条件として両法案に私は賛成したいと思います。