S42/06/20 参議院 法務委員会





久保  等君


vs


法務省民事局長  新谷 正夫君





久保等君 司法書士法の第4条のところで、司法書士となる場合には「法務局又は地方法務局の長の選考によってする認可を受けなければならない。」、こういう規定になっておるわけなんですが、この選考というものは具体的にどういう方法でやられておるのか御説明願いたい。



政府委員(新谷正夫君) 司法書士法の第4条にございます司法書士認可のための選考は、本来個別的に個々の人につきまして能力、人柄、そういったものを具体的に調査しあるいはテストいたしまして、司法書士となるのに適する人であるかどうかということを十分検討いたしまして、この認可をするかどうかということをきめるべきものでございます。


ただ、最近司法書士の希望者が非常に多くなっておりまして、現在約3000人くらいの人が司法書士の認可の希望を年々出してこられるわけであります。


これにつきまして各法務局長あるいは地方法務局長におきまして個別的にそのつど選考するということになりますと、非常にこれは手数もかかりますし、また各希望者にとりましても、不均衡を生ずるおそれもないではないということを危惧いたしまして、現在におきましては、一応各種の法律につきまして、司法書士となるに必要な関係の法律、あるいは手続上の実務の問題、こういったものを試験の形式にいたしまして、各法務局、地方法務局でアンバランスのないような試験を実施いたしまして、これに合格した人を一応能力のある者と認めまして選考をいたしているというのが実情でございます。



久保等君 調査士の場合には、これは法務省の中に何か試験委員みたいなものを任命して統一的に一元化してやっておられるからあまり問題ないと思うんですけれども、この司法書士の場合には、この第4条に規定されているように、一カ所で統一的にやるわけではもちろんなく、ある程度の基準は、いま局長の御答弁で、ある程度アンバランスの起こらないような配慮はしているようですけれども、しかし、現実には法務局ごとにあるいは地方法務局ごとにやられるとすれば、試験の問題はもちろん違う場合もありましょうしするから、どうしても一本でやるようなわけにはまいらないと思うんですが、ですから学科試験なんかもどういったような科目についてやるということになっているんですか、なっておればその科目を具体的に御説明願いたい。



政府委員(新谷正夫君) 司法書士認可に関しまして選考のために試験を実施いたしておりますが、その科目を申し上げますと、たとえば昨年の6月に実施いたしました選考試験でございますが、これによりますと、民法、刑法、商法、さらに不動産登記法、供託法、司法書士法、そういった科目のほかに、さらに手続上の問題もございますので、民事訴訟法とか、商業登記法、あるいは供託法、こういったものにつきましてそれぞれ問題を出しまして、さらにまた具体的な問題を提起いたしまして、それに基づいて申請書も作成してもらう、こういうふうな各種の問題を提出いたしておるわけでございます。



久保等君 昨年の6月というのは、それはどこでやった試験ですか。



政府委員(新谷正夫君) これは各法務局、地方法務局におきまして実施いたしたのでございます。



久保等君 そうすると、試験問題の具体的な問題は、各一本で全国的に同一日時にやるんですか。



政府委員(新谷正夫君) 現在は、同一日時に同一の問題を各法務局に配りまして、これによって実施いたしております。昨年は619日に全国一斉に実施いたしたのでございます。



久保等君 そういう形でやっておられれば、あまりアンバランスとかなんとかという問題は出ないと思うのですが、ただしかし、4条の法文からいきますと、たてまえとしては、何かきわめて自主的に各法務局あるいは地方法務局ごとに、しかも適当な時期にやればいいというふうに普通はこれ解釈されますね。


そこで私は、そうするといろいろ不便なりあるいはアンバランスな問題が出てくるんじゃないかという感じがしたからお尋ねしたんですけれども、実際にやっておられることは、そうすると調査士法と、調査士の試験の場合と変わらないような一元的にやっておられるということになりますね。


そうなると、法のたてまえが、法のほうがむしろ私はそういう点では不備ではないかというふうに感じているんです。


しかも、ここに試験とはなっていないんで、特に筆記試験があるとは明確に――この条文から見ますと、選考だから、面接して適当に、まあ人柄がその場でわかるかわからないかは別にして、とにかく学力なり何なりをある程度テストするというぐあいに、あくまでも選考という現在の法文上のたてまえからすると、まあどちらがおかしいということになれば選考のほうがおかしいということになると思うんですけれども、法文のたてまえからいくと、だいぶ実態はかけ離れていますね。


そのことについてどんなふうにお考えですか。



政府委員(新谷正夫君) 確かに、法律上は、各法務局長あるいは地方法務局長におきまして個別的に認可の申請をしたものにつきまして選考すべきたてまえになっておるわけでございます。


しかし、最近、先ほど申し上げましたように、希望者が非常に多くなっておりますことと、また全国的にその選考の方法がまちまちでありますと、司法書士制度そのものにもこれが影響いたしまして、司法書士の素質の低下というふうなことも考えられるわけでございます。


そういったことから、選考の一つの方法といたしましてこの試験の形式をかりておる。


それも問題をできるだけ全国的に均一にいたしますほうがよろしいわけでありますので、問題を不均衡にしないためには、やはりその試験の期日を同一に、一斉に実施するということのほうがよろしいわけでありますので、先ほど申し上げたような実際の運用といたしましては、原則的に全国一斉に試験をやりまして、それによって選考をしておるということでございます。


ただしかし、この法律のたてまえは、ただいま仰せのように、個別的に選考するということが法の精神であろうと思います。


また、実際問題といたしまして、司法書士の場合におきましては、都会にもちろん希望者が多いわけでございまするが、やはり山間僻地におきましても司法書士の需要がございます。


公共団体におきましても、あまり経済取引等の活発でない地域におきましても、ぜひ司法書士さんを置いてもらいたいというふうな要望が現に出ておるわけでございます。


そういう場合に対処いたしますためには、この一斉試験だけではやはり必ずしもその需要に応じ切れないだろうということも考えられるわけでございます。


そこで、法律のこの選考の趣旨から申しますなら、そういった特殊な場合には個別的にその選考もする必要があろうということで、そこはある程度弾力性を持たせまして選考をいたしております。


この場合とても、やはり現在では、一応試験問題をつくりまして、先ほど申し上げましたようないろんな科目につきまして試験問題を作成いたしまして、そういう緊急の需要にこたえるだけの用意はいたしておるわけであります。


数はあまりございませんけれども、どうしても年度の途中におきましてそういう必要性が出てくるという場合もございますので、そういう場合には個別的な選考の方法もとっておるというのがし実情でございます。



久保等君 なかなか試験問題も、先ほどの御説明にもありますように、科目も非常に多いんですね。


それから、実際、受験者とそれから合格したという数を見ても、相当な競争率になっていますね。


大体1割ぐらいしか合格しないというようなことが、いままでやった試験の結果からも出ているのですがね。


そうなると、単なる選考という程度の問題じゃなくて、これは堂々たる筆記試験でもあるようですからね。


そうだとすれば、現在の、現行法のようなあいまいな選考という程度じゃなくて、試験をやるんだと、それで試験に合格した人は初めて司法書士としての資格があるものと認定するというような形にきちっとして、さらにその資格のある者が登録をした場合には初めて業務が行なえるんだというように制度をきちっとしたほうが、現状にも合うし、それから受験をする立場からいえば、選考だといっておるものの実態はなかなか――非常に多い科目について相当勉強しなきゃならぬと、なかなか簡単にパスはしないということであって、むしろ制度そのものをきちっと制定したほうが、制度として確立をしたほうが、受験する立場からいっても非常に受験しやすい。


受験科目そのものもだからきちっとしたものを公示して、この科目について試験をやるんだというような、もう少し権威のあるものにしたほうがお互いの便利じゃないか。


それからまた、一般の国民の立場からいえば、一つの資格を持った司法書士が誕生してもらえば非常にけっこうであるし、受けるほうも、あいまいになっているがなかなか事実は試験はむずかしいのだというようなことになると、準備をするのについても不利不便じゃないかという感じがするのですね。


そういう点で、現行法が現実からむしろ離れたような形になっているので、だから、資格というところには比較的ゆるやかな規定があり、それでその次へ、その資格ある人間が選考を受けて認可を受けるのだとなっているが、選考がどうしてなかなか単なる選考じゃなくて、いま御説明があったような形で相当なむずかしい試験だということになっておるようですね。


それならば逆に、この試験にパスした人は資格のあるものとし、そうしてあと登録手続を経れば初めて業務が開始できるというふうにしたほうが、むしろ現実に合うのじゃないか。


それから、片や調査士なんかと比べてみても、制度的にもほとんど同じような制度になる。


どうもこの司法書士法というものの試験制度というものが確立されておらない。


試験制度は表向きは何かないような形になっていますね。


これはむしろ現実離れがしているのじゃないか。


だから、実態に合わせる意味からも、試験制度を確立したらいいんじゃないかというふうに考えますが、どうお考えですか。



政府委員(新谷正夫君) 確かに、久保委員の仰せのような、調査士法がはっきりした試験制度をとっておりますのに対しまして、司法書士におきましては選考という形をとっている。


受験する側からいたしましても、またこの制度の関係から申しましても、はっきりした試験という形に統一するほうがすっきりしたものになると、これはもう仰せのとおりだとわれわれも思っております。


いずれはそのような方向に向くのではないかと思いますが、先ほど申し上げましたように、現在まだなかなか、この司法書士さんの浸透の状況と申しますか、地域的に非常に偏在しておるのが実情でございます。


先ほどもちょっと申し上げましたけれども、ある地方公共団体の理事者の方からも陳情を受けたわけでございます。


町には司法書士さんが大ぜいおられるけれども、山間へ行くと、この仕事をやっていただく専門の方がおられないので、住民も非常に困惑しておる、何とかして早くこれを山間の地域にも置いてもらえるような方法はないものだろうかということが申し出られたわけなんです。


現在のところ、そういった地域が、全国的に見ますと、かなりあるわけでございます。


ことに、ダムの建設とか、道路の建設、こういったことが都会地以外の地域においてもかなり大幅に行なわれております。


そういたしますと、登記事件等も勢いそういった地域においてもたくさん出ておるわけでありまして、司法書士の方の力をかりなければならないという事態が多くあるわけであります。


これが司法書士さんの事務所がある程度全国的にまんべんなく各地に設けられるというふうな状況になりますれば、国民もさして不便を感じないだろうと思うのでございますが、現在のところ残念ながらまだそういう状況に至っておりません。


そういたしますと、やはりそういった特殊な事業等が行なわれる場合、特に司法書士になりたいという希望者がありましても、1年の間の一定の期日の試験が来るまでそれを待っていていただきたいというわけにもまいらない場合があるわけでございます。


こういった場合には、やはりこの選考という方法によって個別的に審査をいたしまして司法書士の認可をするかどうかということをきめる必要が現実にはまだまだあるわけでございます。


それで、いま一挙に試験制度に踏み切ってしまうということについて、私ども若干ちゅうちょを感じておるわけであります。


いま少しくこの司法書士制度というものが普及いたしまして、事務所がある程度各地に、全国津々浦々にまで設けられて、国民の不便がなくなるというふうな時期が参りますれば、確かに御説のように、一律試験制度にすることも一考に値するものであろうということを考えております。



久保等君 しかし、試験の現在の状況を見ても、合格者が受験者の約1割程度にしか及ばないという状況からすると、試験そのものは、そんな僻地のような場合には相当選考基準を下げて合格をさせるかということになると、なかなか簡単にそうもいかない。


また、反面問題があるだろうと思うのです。


だから、筆記試験を一律的にやる問題については、最低のレベルはある程度確保しなければならぬという意味で、一つの試験制度をつくり、それから第一次試験にパスした人間に対して、今度選考で――それこそほんとうの司法書士としての資格を与えるという第二次試験ともいうべきその選考のところでそういう地域的な問題を勘案して考慮していくという方法もあるだろうと思うのです。


そうしないと、現在のような選考、選考とは言っているが、その実態はなかなかむずかしい試験制度になっておりますからね。


いま局長は御答弁で、何かそういうところについては特殊な考慮を払いたいと言うが、しかし実際問題として、この試験制度とおよそかけ離れてしまった特別の選考方法で認定をして資格を与え認可をする、そういう方法で司法書士になることを認可するという形にはなっていないでしょう。


統一的な基準から、よほどまた別個の事情を酌量した扱い方をしているというわけじゃないのでしょう。


実施の時期を、たとえば1年に一ぺんやっているのを、また別個に二度なり三度なり、その地域地域の実情によって試験の回数を多くするとかというふうなことで、統一的な基準を大幅に下げているという選考じゃないのでしょう。



政府委員(新谷正夫君) 全国一斉に行なっております試験につきましては、本省におきまして問題を統一いたしまして、各地にこれを配りまして、試験を行なっておりますが、先ほど申し上げましたような特殊な場合におきましては、そういう方法をとることが実際問題として困難でございます。


しかし、すでに法務局におきましても、過去数年にわたりましてこの試験を実施してまいりました経験もございます。


ですから、どうしても緊急に選考をしなければならないという特殊な場合におきましては、従来の問題をも考慮に入れまして、レベルのあまり差異のないような問題をそのつど現地のほうでつくりましてその試験をやってもらっているというのが実情でございます。


全く同じ問題を出すわけにはもちろんまいりません。


現地でつくります問題でございますので、こちらで考えておりますものと全く同程度かという御質問に対しまして、そのとおりでありますというお答えはちょっといたしかねますけれども、大体従来の試験問題の程度の問題を各地でつくりましてやっておるというような実情でございます。



久保等君 それから、現在のたてまえとしては、自分がその事務所を設けようとするその地域を管轄する法務局で認可をしてもらわなければならないというたてまえになっていますね。


そうだとすると、場所を変えて事務所を開設しようとすれば、そのつどそれを所管する地域の法務局に認可の申請をする。


まあそうすれば、それに対して当然選考認可ということになるわけですね。


だから、この法律のたてまえからいけば、何べんでも選考試験を受けなければならぬというようなたてまえになっておると思うのですね。


しかも、いまも言ったような全国統一的な試験問題について同じ日時に試験を行なうとすれば、何も事務所を開設するたんびに選考認可を受けなければならない――まあ認可は受けなければならぬとしても、選考認可を受けなければならぬということは、これまた現状に少し合わないのじゃないか。


そこら辺の点も考えて、やっぱり試験を全国統一的にやり、しかも、それに対しては資格をきちっと与えて、あとは登録を自分が事務所を開設しようとする法務局に届け出るというような制度にしたほうが、実際の運用上非常にやりやすいのじゃないかという気がするのですね。


この法律のたてまえからいうと選考という形になっているのだから、自分が事務所を移転した場合には、移転した場所の法務局に届け出て、申請をして認可をしてもらわなければならぬ。


その認可そのものは、認可と選考というものがくっついた形になっておりますね、現在のたてまえは。


そこがむしろ現状に合わないような形になっているのじゃないか。


したがって、試験は全国統一的にやられたらどうか。


それからまた、選考というものは、ほんとうの筆記試験とは別の選考というものを第二次試験的な形でやっていったほうがいいんじゃないかという気がしますね。


それから、法務局がかわるごとに選考認可を受ける手続そのものも、少し現状からすると不便であり、また現状に合わないのじゃないかというように思いますが、その点はどうですか。



政府委員(新谷正夫君) 確かに、現在の司法書士法の4条の規定によりますと、事務所を設けようとする地を管轄する法務局または地方法務局の長の選考認可をそのつど受けなければならないということになっておりますので、一度ある法務局におきまして試験に合格いたしました者も、他に事務所を設けようとする場合には、たてまえ上は他の法務局であらためて選考を受けて認可を新しく受けるということになるわけであります。


しかし、先ほど申し上げましたごとく、司法書士の素質の向上、資質の充実をはかるという趣旨から、できるだけ能力のある人を司法書士にしたいという気持ちからこの一斉試験を実施いたしております。


一斉試験でありますからには、どこで受けましてもその合格者は合格者と言わざるを得ないのであります。


したがいまして、この試験に合格した者であります限りは、たとえば甲の法務局から乙の法務局に事務所を移転しようという場合におきましては、その法務局相互間で連絡をとりまして、その試験は実際問題としてはいたしておりません。


ただ、その能力が十分試験によってテストされておるわけでございますから、新しく設けようとする地の法務局長が面接をいたしまして、事実上もう少し簡易な選考の方法によりましてこの移転を認めておるというのが実際の運用でございます。


したがいまして、御心配になりますような点は、現在でも一斉試験をやっておりますことと並行いたしまして、法務局としても司法書士の方々の御不便のないような運用をやっておるつもりでございますので……。



久保等君 まあ運営上はそうならざるを得ないと思うのです。


だから、その運営上そうならざるを得ないとすれば、その実態に合ったような法律制度にむしろきちっとしたほうがいいのではないか。


一次試験の筆記試験のところは、これは最低の全国的に統一された資格を持つ。


それから地域によってなかなか人が集まらない、実際司法書士がほしいのだけれどもなかなか来手がいないというようなところは、いま言ったような選者のところでその地方に合ったような扱い方をしてゆるやかにしていけば、都会では一次試験はパスしたが二次試験はなかなかむずかしいという人でも、そういう地域に行けば選考で比較的ゆるやかに認可をもらえるというようなことであれば、実情に即していくということになる。


だから、運用の妙を発揮する上からも、選考というのはほんとうに一次試験にパスした人々の選考を各地域地域の実情に応じて選考をして認可を与えるというたてまえにして、そのことをきちっと法制的にも行なったほうがいいのではないかと思うのですがね。


この条文だとどうも現実離れしたような条文になっているのですが、お話を聞くと、まことにそのとおりに運用されるであろうと思われるような運用がされているので、私も特別現在の運用をとやかく申し上げませんけれども、むしろ法律のたてまえがおかしいのではないかというふうに考えますね。


まあこの条文を見ましても、ちょっとおかしいと思うのは、第2条のところが資格となっていますね。


しかし、資格というのは、要するに受験資格があるという程度の資格で、ほんとうの司法書士になれる資格ではない。


むしろその選考、認可――第4条の認可のところが、これは実は試験を受けなければ司法書士になれない、司法書士となるには試験を受けてパスしなければなれないということなのですから、むしろこの第4条のところが資格と言うべきであって、第4条で要するに試験を受けてパスした者が司法書士となることができるというならば、だからこの条文の認可のところが認可ではなくて実は試験であり、その試験にパスしなければ司法書士になれないということを第4条の認可のところで規定している。


だから、ここらも条文のきめ方が私はおかしいと思うのです。


だから第2条は資格ではなくして受験資格ですね。


選考受験資格とでも言うべき資格であって、司法書士法にいう第2条第1号の「裁判所事務官、裁判所書記官、法務事務官又は検察事務官の一又は二以上に在ってその年数を通算して5年以上になる者」、それから第2号でもって「前号に掲げる者と同等以上の教養及び学力を有する者」、これがまあ資格を持っているということになっているのです。


これは資格ではちっともない。


書類によって今度は選考試験を受けなければならないということになるのです。


これは受験資格みたいなことですわね、実際は。


だから、そういった点ももう少しきちっと制度を現状に合ったように改正をする必要があると思いますが、どうですか。



政府委員(新谷正夫君) たしかに司法書士法の2条あるいは4条との関係は、いま仰せのとおりだと私どもも思っております。


もう少し司法書士という制度が普及いたしまして、いまのような突発的な需要、そういったものが起きないような状態、あるいはある程度現状が緩和されたような状態になりますれば、そういう方向に持っていくことが司法書士制度の向上発展のためにもいいことであろうというふうに考えておるわけであります。


行く行くは試験制度というものを確かに考える必要があるであろうということは考えているわけでありますけれども、現在の実態は、先ほど申し上げておりますように、地域的に非常な特殊な事情が起きる場合もございますために、一律にそれに踏み切ってしまうということは現段階においてはいかがであろうかということで、多少ちゅうちょを感じているわけであります。


もう少しこの制度の発展の状況等をにらみ合わせまして、御趣旨のような方向で検討はいたしてまいりたいというふうにはかねがね考えているわけでございます。



久保等君 ここ23年、地域の特殊事情に基づく試験を何回ぐらいどこでやっているか、具体的にそれでは御説明願えませんか。



政府委員(新谷正夫君) これは各法務局でそのつどそういう需要が出ましてやっておりますので、全国的に各地でどの程度やっているかということをいまその回数等を申し上げる資料は持ち合わせておりません。しかし、これもかなりの数があるように思うわけであります。



久保等君 手元にもらっておるこの資料の中には、そういったものを含めてのこれは受験者数だとか合格者数になっているのですか、このわら半紙の印刷物は。



政府委員(新谷正夫君) 差し上げました資料の中にございます受験者等の調べは、これは一斉試験による受験者、合格者の数字でございます。



久保等君 そういったものの資料をもらわなければならぬと思うのですが、これはあとでけっこうですから、全国的に一体それならば、法務局ごとに、地方法務局ごとにどういった試験を――まあ科目は筆記試験の場合には必ずある一定の科目についてはやらなければならぬということになっているのだとすればけっこうですが、そうでもない、ところによっては5科目でやり、あるところでは6科目でやってみたりというようなことがあるならば、そういった内容についても、それから日時ですとか、各法務局のやっているところのここ23年間のそういったものの具体的な状況を資料で出してもらえませんか。



政府委員(新谷正夫君) すぐまとめるということは困難かもしれませんけれども、一応調査いたしましてできるだけ資料として差し上げたいと思います。



久保等君 そういう問題もすぐ把握できなかったり、それから答弁願えないところにも、何か試験制度そのものが、非常にこの資料だけで見るとむずかしい試験のようでもあるし、どうも法務省自体があまりタッチしていないというか、ある程度はタッチしているかもしれませんが、こまかいところまではわからない。


自主性といえば自主性にまかせているという面もあるわけですね。


だからそこらが、試験制度そのものが確立していない、現在は法律上からいえば選考という程度ですから。


だから、やはりもう少しきちっとした制度にする必要があるのじゃないかというふうに考えます。


したがって、その状況について各地方法務局なら法務局ごとの状況をひとつ具体的な資料で後ほど提出をしてもらいたいと思います。


本来ならば、法律案の審議中に出してもらって、それを見てからでなければ法案も通せないというところなんだけれども、私が少し勉強する意味で、後ほどでけっこうですからぜひ出してもらいたいと思うのですよ。


いずれにしても、いまのような状況であればあるほど、私は試験制度というものを明確に内外に向かってきちっとしたものをやはり確立しておく必要があるのじゃないか。


それで地域地域の特殊事情というものを勘案していこうとすれば、二次試験とも言うべき選考の中でその地域地域に合ったように選考していけばいいのであって、最低限度の筆記試験で求める基準というものは、年に一ぺんであろうと年に二へんであろうと、統一的に同一日時でやる、同一問題についてやるということにしたほうが、試験制度そのものを権威あらしめるゆえんじゃないかと思うのですね。


したがって、局長の先ほど来の御答弁だと、現在そこまで一挙にいくと地域の特殊事情に基づく特殊性に応じ切れないという御答弁なんだけれども、しかしそれはそれで十分即応できると思うのです。


いまのような条文にしておいたほうが現在に合うというならばいいけれども、現状がむしろこの法文とはだいぶかけ離れた実態になっている。私に言わせれば、実態は万やむを得ざる実態なんで、運用もこまかいことは別として大筋としてはけっこうだと思うのです。


しかし、法律制度から見ると、法律制度がむしろ現状にマッチしていない、かけ離れている。


したがって、もう少し常識的に改正をする必要があるのじゃないかというふうに、先ほど2条なり4条の問題を具体的にあげてお尋ねしたわけですから、まあそういった改正問題についてもひとつ今後検討していただくというふうにお願いしたいと思うのですが、どうでしょうか。



政府委員(新谷正夫君) 確かに、将来の問題といたしましてこの選考制度を試験制度に改めていくということは、われわれとしても検討いたさなければならない課題でございます。


まあ現在の実情とのかね合いもありまして、しばらく現行のままでという気持ちでいっておるわけでありまして、早晩久保委員仰せのような試験制度に持っていこうということも具体的に取り上げて検討いたしたいと考えております。



久保等君 私がいま申し上げたようなことは、司法書士会のほうからの意見としては、従来別に何も出ていませんか。


現行こういう制度の形になっておることに対して、特別意見は出ておりませんか。



政府委員(新谷正夫君) 司法書士会連合会からの正式の意見としてはありませんけれども、一部の会からは、司法書士制度の充実という観点からもっとしっかりした国家試験制度にすべきじゃないかという意見も一部にあるわけでございます。


これは法務局側の意見としても、そういう意見もないではございません。


ただ、いろいろの現在の実情がこれにからんでまいりますと、いま一挙にそこまで行くことはどうかというので差控えておるというのが偽りのない実態でございます。



久保等君 ぼくは事新しく、特に司法書士そのものの資質をこの際思い切ってひとつ引き上げたらどうかということを申し上げているわけじゃないのです。


むしろ現状そのものがこの法文から見るとかけ離れている。


法文のほうが現状に合ってないということを申し上げているわけです。


だから、司法書士そのものの資質を現在よりも思い切って充実する云々の問題は将来の問題として、さしあたって現状に合ったような形にこの試験制度そのものを書き改めたらどうかということを申し上げているわけです。


まことにどうも、この条文から見ると、選考そのものはきわめて安直にやれるような選考の形になっておるのだけれども、実際はなかなかむずかしい、10人に1人しか受からないような筆記試験をやっているということを聞いて、現在の法文そのものを別に現状に合ったような形で法改正する必要があるんじゃないかというようなことを申し上げているわけですから、これはひとつぜひそういう立場で検討願いたいと思います。