S51/05/11 参議院 法務委員会




○佐々木静子君 それでは、まず法務省に司法書士の国家試験問題についてお伺いさしていただきたいと思います。


 現在の司法書士法の規定によりますと、司法書士となる人がその事務所を設けようとする地の法務局または地方法務局の長の認可を受けなければならないというふうにされているわけでございますが、この認可制度を改めて国家試験ということにし、この試験に合格をした者に司法書士の資格を与えるようにしようという問題、いわゆる司法書士の国試――国の試験、国試問題としてこれまで国会において取り上げられてきておりまするが、全国の司法書士の方々がその早期実現ということを強く希望しておられるわけでございます。

すでに、当局においても御承知のとおりでございますが、司法書士会の連合会では、このような全国の司法書士の会員の要望を受けて、昭和四十八年から司法書士国家試験制度要綱試案を発表し、これに基づいて法務当局等に国家試験制度を実現するための司法書士法の改正を要望しているわけでありますが、まず第一に、四十八年以後、法務省と日司連との間でどのように具体的に話が進んでいるのか、その状況を御説明いただきたいと存じます。


○政府委員(香川保一君) 四十七年の七月に、日本司法書士連合会から法務大臣あてに、いま仰せのような内容の司法書士法の改正の要望がございまして、これは国会でも、司法書士についても土地家屋調査士と同じような国家試験制度を採用するように努力しろという附帯決議もございましたものによるものでございますが、ただ司法書士業務の実態を踏まえての、真にその司法書士業務が十分行い得るような司法書士の制度をいかようにすればいいかという、将来のいろいろの問題も含めましてむずかしい問題がございますので、司法書士連合会の方で独自にお考えの案というふうなものはあるんだろうかというふうなことが問題になりまして、いま仰せのとおりに四十八年七月に日本司法書士連合会におきまして改正要綱試案というような、まあいわば案が決定されまして、それを受けましてその後民事局におきまして司法書士連合会といろいろ問題を詰めて議論しておるという状況なんでございますが、問題点の詳細はいろいろございますので、ここでちょっと申し上げるのも時間があれでございますが、いろいろ多種多様の問題が介在しておりまして時間が少しかかり過ぎておりますけれども、それだけ問題がむずかしいということで、今日まだ具体的な詰めができていないという状況でございます。


○佐々木静子君 いまお話にもございましたように、四十二年に司法書士法の一部改正が行われた。

そして、そのときに衆議院の法務委員会で国家試験制度を採用するように努力するという附帯決議がお話のとおりあったと思うわけですが、もうすでに九年たっているわけですし、会員の方々はまあ待ちくたびれておるというふうなことで、何とか早く法務当局にも御協力をいただきたいというふうな機運も高まってきていると思うわけです。

いま、お話にもございましたように、いろいろとむつかしい問題があるというお話でございますが、まあ根本的に言いますとどのような点で時間がかかっているのか、ちょっと時間もありませんから簡単に御説明をいただいて、そして今後の法務省の方針というものもお述べいただきたいと思うわけです。


○政府委員(香川保一君) いろいろ問題ございますが、そのために時間もかかっておるわけでございますが、一つの問題点申しますと、国家試験制度を採用した場合の最初に問題になる一つの問題としまして、司法書士の事務所を設ける場所、つまり司法書士をどのように全国に配置するかという問題があるわけでございます。

大体、いままで国家試験がとられておる制度を見ますと、国家試験に合格すれば当然司法書士になれるという形になるわけでございまして、そうなりますと事務所をどこに設けるかは本人の自由ということになるわけでございますが、そういうことになりますと、どうしても都市に司法書士が集中するという現象が出てくるんではなかろうか。

ところが、司法書士の業務から申しますと、現在御案内のとおり全国に千五百ぐらいの登記所があるわけでございまして、この登記所に対する申請手続をするのが司法書士業務の大半でございますが、田舎の出張所、登記所に司法書士が一人もいないということに相なりますと、その地域住民にとっては非常に不便なことになるというふうな問題があるわけでございます。

そのようなことで、現在、先ほどおっしゃいましたように、各地方法務局の長が司法書士を認可して、各府県ごとにと申しますか、認可して事務所はここに設けるというふうなことでやっているわけでございます。そういったことが、国家試験を採用すれば一体どういうふうに調整すればいいかというむつかしい問題があるわけでございます。

これなんかが一つの大きな例でございますが、それからさらにこれは率直に申し上げますと、現在司法書士になる方の給源と申しますか、人的ソースを見てみますと、法務局あるいは裁判所、検察庁に長年勤務して、その道の実務を十分心得た人が選考試験を受けて司法書士になっておるという者も相当おるわけでございます。

こういう人たちはやはり国家試験になった場合でも十分合格できる自信はおありだろうと思いますけれども、その面からやはり国家試験になれば自分たちのそういった将来やめてからの職域が閉ざされるのじゃないかというふうな危惧もございまして、この辺のところも理屈はさておきまして、実際問題として調整しなきゃならぬというふうな問題もあるわけでございます。


 それから、根本的に、司法書士の仕事は裁判所、検察庁あるいは法務局、まあ登記所等に出す書類をかわって作成するということでございますけれども、その仕事は実際本人――依来人の言うままに書類を書くというわけにもまいりませんので、やはりそこに法律的な整理をして、本人の意図はこうだということを十分把握した上で、その真の希望どおりの書類を作成するという法律的な事務でもあるわけでございます。

そういうことから、いろいろ取引関係あるいは国民の権利保全、擁護というふうなことに相当のかかわり合いを持つわけでございますので、単にペーパーワークの国家試験だけで直ちに司法書士として適格であるというふうなことが言えるかどうかというふうな根本的な問題もあろうかと思います。

それやこれやいろいろ問題がございまして、その辺のところは司法書士連合会におきましても十分理解は示しておるわけでございまして、同じような考え方に立ってそれを制度的にどういうふうにまとめていくかというところを現在詰めておるわけでございます。

○佐々木静子君 いまお話を伺いまして、この国家試験の問題は法務省は無論のこと、裁判所その他の各方面にわたって考慮しなければならないということで、慎重に御検討なすっているということ、よくわかりました。

そして、日司連の作成したこの司法書士国家試験制度実施要綱も私も実は拝見さしていただいているわけでございますが、これはかなり高く理想を掲げたものであって、現実の問題とするとなかなかこのとおり実現しにくいという面も多分にあるとは思うわけでございますけれども、この法務省のいまの御答弁で国家試験制度を導入するという方向で進んでいらっしゃるというふうに承っていいわけでございますね。


○政府委員(香川保一君) 国家試験の導入は、これは司法書士の資質を向上させる、ふさわしい司法書士を生み出すにはやはり適当な制度じゃなかろうか。

現に、先ほど地方法務局長の認可という形には法律上なっておりますけれども、実質的には全国統一の筆記試験もやっておりまして、国家試験に近づけているということから申しましても、法務省といたしまして国家試験制を導入すること自体については大いに結構なことだというふうに考えております。


○佐々木静子君 そうしますと、今後の見通しとして大体いつごろまでに成案を得られるというふうに承ればいいわけでございますか。

○政府委員(香川保一君) 先ほど仰せのように、現に司法書士になっておられる方が全国的に国家試験の導入を強く要望しておられるわけでありまして、これは自分たちのことではない、これからの問題なんでございますけれども、やっぱりそれだけ司法書士制度というものを充実させることについて全国の司法書士が相当強い関心を持っておられ、熱心にその道をさぐっておられるということの証左だと思うのであります。

そういうことでございますので、私どもといたしましても方向は同じでございますから、できるだけ早く成案を得て国会に提案さしていただきたいというふうに考えておりまして、今後少しピッチを上げて作業を進めたいと、さように考えております。


○佐々木静子君 この点について、大臣に最後に一言お伺いしたいと思います。


○国務大臣(稻葉修君) 民事局長からこの制度についてのいろいろ困難な点を二点ばかり申しましたが、それもやりようによっては解決し得るように私は思うんです。

ですから、精力的に作業を進めまして、なるべく早い機会に法案を提出したい、こういう姿勢でございます。