S53/06/06 衆議院 法務委員会



横山 利秋君


飯田 忠雄君


正森 成二君


vs


法務省民事局長 香川 保一君





横山委員 次に、国家試験ということになる。


これが法律改正、画期的でございますから、法務省もこれから国家試験の準備その他におかかりになる。国民が非常にそれに対して関心を持つ。


1回国家試験にはずいぶんたくさんの人が新しく応募することになるのではないか。


これは一般の人も、それから司法書士会で働いておる従業員の皆さんも、あるいは役所の皆さんも、とにかくこの法律改正によってたくさん応募すると思うのであります。


 そこで、私はひとつ現在の司法書士の需給状態をちょっと聞かしてもらいたいのでありますが、ここ23年どのくらい合格して、毎年特認がどのくらいあって、そして廃業する人が毎年どのくらいある、プラスマイナスしてどのくらい増加があるかということであります。



香川政府委員 現在認可しておりますのは、大体400名から500名ぐらいでございます。そして毎年やめる人は大体350360名から450460名ということになっておりますので……(横山委員「特認が別にあるでしょう」と呼ぶ)それから特認の数は大体150名から200名ぐらいでございますので、差し引きいたしますと毎年150名ぐらい司法書士がふえておるということに相なろうかと思います。



横山委員 概数でありますから私も正確なことを議論しようと思いませんが、あなたの勘定でいきますと150名ないし300名ぐらい純増になりはしませんか。



香川政府委員 年によりますとさようなことになる年もあるようでございますが、一般的に申しますと、大体400名から500名ぐらいが新たに一般から司法書士になっておる。


それに特認が大体平均しまして150人ぐらいから200人ぐらいでございますから、合計550名から700名ぐらいに相なろうかと思います。


それに対しまして認可を取り消すということになる、これは死亡も含めてでございますが、それが年間350から450ぐらいということに相なりますので、年によりましてはあるいは純増が300名ぐらいになる年もございますけれども、一般的に申しますと150名から200名弱というふうな年が統計上は多いようでございます。



横山委員 毎年の試験の応募はどのくらいありますか。



香川政府委員 最近におきましては受験者、認可申請者総数16000、これは52年度が16000人でございますが、一番最近において多いのでございます。


ちなみに申しますと、昭和44年は7600人、昭和47年で11000、そのあたりからだんだんふえてまいりまして、現在、昭和52年は16000人の受験者がございます。



横山委員 そこで考えるのですが、いままで純増が150名ないし、私の計算でいきますと、いまの最高値をとってみまして350名。


150名から350名ぐらいの純増である。


そして一方応募は年々ふえて、いまの話でいきますと52年で16000名。


第一回国家試験をこれからやるとなると、わっとふえると思うのであります。


国家試験でありますから、合格点をどの程度にするかという問題もございますし、国家試験の内容もあるのですが、ここで考えなければならぬことは、司法書士の分布状況、需給状況のことだと思うのであります。


試験の採点の方法、内容、合格率ということをどういうふうにこれからおやりになるつもりでありましょうか。


ずっとふえるこの応募者と、それから今日の司法書士の業務がここ23年来、石油ショック以来非常に減少しておることは言うまでもありません。


減少して食うに困ると言えば、物価も上がっておるから報酬の引き上げということが付帯的に生じてくる、過当競争になれば、またこれはいろいろ問題がある、一方では僻陣地における司法書士のありようということがやはり問題になる、そういう点では、国家試験と司法書士の需給についてどういう方針をお考えになりますか。



香川政府委員 国家試験制度の導入で一番配慮しなければならない問題は、いま御指摘の問題だと思うのであります。


ただ現行の司法書士法は、御承知のとおり、法務事務官あるいは裁判所書記官等5年を経験した者、これと同等以上の知識を有する者について認可するというふうになっておるわけでございます。


今回の改正案におきましては、この5年を10年に引き上げておるわけでございまして、さような法務事務官、裁判所書記官でも10年以上経験して、さらに法務大臣が司法書士としての知識、能力を有するというふうに認定した者が特認制度として司法書士になれることにいたしておるわけでございます。


したがって、形式的に見ますと、現在の統一試験、選考試験は合格者につきましては法務事務官5年以上と同等ということでございますので、おのずからそのレベルでの合格点ということになるわけでございますが、それが10年ということに改正されますと、いわば端的に申しますればそれだけ合格基準というものが上がるということになろうかと思うのであります。


もちろん国家試験でございますから、直接需給関係を考えて、年々合格基準を上げたり下げたりするということは趣旨に反することだと思いますけれども、少なくとも合格基準というものはいままでよりも相当上がるというふうに考えておるわけでございます。


 率直に申しまして、現在の司法書士業務に属する全体の事務量と司法書士数から考えまして、私は、ある程度全国的に見て飽和状態になってきておるのではないか。


もちろん地域によりましては司法書士がいなくて困っておるところもございますけれども、全体としては、特に都市におきましては、御指摘のような飽和状態になっていることから、過当競争というふうな好ましくない現象も生じておるわけでございます。


 それやこれやいろいろ考えますと、やはり年々、特認の司法書士も含めまして500名以下に新しい司法書士を認めていくということにしなければかえって弊害が生ずるのではないかというふうに考えるわけでございまして、先ほど申しましたような5年が10年になったことから、見通しといたしまして、従来の基準を引き上げる措置が当然必要でございますが、さようなことを考えました場合に、やはり合格者は全体として400名以下になるのではなかろうかというふうなこと、したがって特認の制度を合わせまして大体500人ぐらいというふうなことであれば、さほど需給関係から心配することもなかろうというふうに見通しておるわけでございます。この点今後の問題として、十分御質問の御趣旨を体して検討さしていただきたいというふうに思っております。



横山委員 結論としてはあなたの御答弁で結構でございますが、その中で多少ひっかかりますのは、5年が10年になった。


特認の人はいままで、法務局で5年働いておれば司法書士になる資格がある。


それが10年になった、10年になったと何回もおっしゃるのですが、実際問題として、特認で司法書士になる人は平均何年勤続の人がなっていますか。


25年ぐらいじゃないですか。


税理士といい、司法書士といい、土地家屋調査士といい、事あらゆる士職について私はとかく疑問を生ずることがあるわけです。


これはかつて税理士法を審議したときでありますが、猛烈に完全国家試験制度を税理士が主張した。


これは税理士ばかりではなくて、国民を憲法における公正な競争下に置いてもらいたいということです。


おれたちは一生懸命勉強したのに、税務署におって、まあ法人税かあるいは直接税でもやっておった者ならともかくとして、総務、経理系統に何年おったって税務がわかっておるはずがないじゃないか、それが特認でいきなり税理士の資格をもらうということはおかしいではないかという理屈もないとは言えないと思います。


だから特認のあり方についても、実際問題として、5年が10年とおっしゃるけれども、25年ぐらいたたなければ司法書士に現在なれないという実情が、10年というふうに今回改正になることによって、特認の人たちは大変楽な条件になるのではないか。


試験はむずかしくなる、特認の条件は緩和される、こういう結果になるのではないか。いま特認と一般試験とのバランスを考えてみまして、かなり特認の人の比率が多いと私は思うのです。


言いにくいことであるけれども、やはりそういう点についても若干の配慮をする必要がありはしないか。


試験はむずかしくなる、特認は条件が緩和されるということでは、少しアンバランスになるのではないかと思いますが、どうなんですか。



香川政府委員 現在法務事務官5年以上ということで司法書士になる資格があるといえばあるのでありますけれども、実際の運用は20年から25年ぐらいの経験者でなければ特認をしていないわけでございます。


先ほど申し上げましたのは、現在国家試験的な統一試験というのをやっておるわけでございますけれども、法律の表面にあらわれておる一つの趣旨から申しますと、法務事務官5年、それと同等以上ということになっておる、その同等以上ということの審査として統一試験が今日まで行われてきておるわけでございます。


それが司法書士業務の重要性から、今回5年を10年に上げる、そういう形式的な差異が出てまいりました場合に、私どもとしては、それによってさらに特認の選考をより厳しくしなければならぬという趣旨も十分体しておるつもりでございまして、形の上ではいままでの統一試験よりは今度の国家試験の方がより合格基準が高まるというふうに受けとめておるわけでございます。


さような趣旨で申し上げたわけでございまして、まあ5年、10年の対比は、統一試験と改正後の国家試験と合格基準が同じであっていいということにはならぬだろうという趣旨で申し上げただけでございます。



横山委員 私の質問に答えていないです。


あなたの部下のことですから大変お答えしづらいかもしれぬが、常識的に言って、試験はむずかしくなる、特認は条件が緩和されるでは、少し不公平ではないかという意味のことを私は言っている。



香川政府委員 外からごらんになりましてどのようにごらんいただいておるかあれでございますが、私ども内部のあれといたしましては、決して特認の制度を緩やかに現在運用しているわけではないわけでございまして、20年以上やりましてもやはりそれぞれの試験もやっておるわけでございます。


統一試験でない形のものでございますけれども、試験は必ずやっておるわけでございます。今後とも先ほど申しましたような法改正の趣旨にのっとりまして、今日よりも特認の制度が厳しくこそなれ緩やかになることは決してあってはならぬことだというふうに考えております。



横山委員 私が需給状態と言う意味はいろいろな意味があるわけであります。


全般に司法書士の純増をどういう角度で押さえるかということが一つ、それから一般試験と特認とのバランスをどういうふうに考えるか、この二つあるわけであります。


まあ法務局で働く職員の諸君の将来の希望ということも一よく考えられることではありますから、私は純理論だけで言おうとは思いませんが、もし私の言うように、試験はむずかしく、特認は軽くなる、そして従来のバランスが崩れていくということでは、国家試験は何のために行われるかという疑問すら国民の中に生ずるわけでありますから、その点は十分私の質問の意味を配慮していただきたい。


おわかりになりますか。



香川政府委員 仰せのこと、その間にいろいろのお考え、つぶさによく理解できることでございまして、御趣旨に沿うようにいたしたいと考えております。




横山委員 土地家屋調査士の法律を改正するとしたならば、どういう点とどういう点が今後の検討事項になりますか。



香川政府委員 今回司法書士法の改正として御審議をお願いしておる事項、それと横並びに同趣旨の改正をいたしたいというふうに考えるわけでございますが、ただ一点問題になりますのは、先ほど来論議いただきました特認制度を入れるかどうかという一点でございまして、この点について私どもとしては司法書士法との横並びを十分考えて、何らかの形で特認制度を設けたいというふうに考えておるわけでございます。


これが司法書士法の改正と違うと申しますか、横並びで同じ結果になるのでございますが、それが新たな問題としてあるわけでございます。



横山委員 その特認制度につきましては、これはもう先ほど税理士法を含めてるる私が――一般の試験を受ける人の立場、そういう純理論的な立場がございますので、よほど政府としては、土地家屋調査士あるいは現職で法務省で働いておる人、裁判所で働いておる人、そのほかの役所関係の人というふうに十分に念査をして、説得力のある、双方の理解のものに行われることを私は期待をいたしたいと思います。





続いて、飯田君登場。


公務員労働組合の代表なのかな。


露骨な特認擁護。


香川君も、それを受けて、天下り先開拓宣言までしちゃってる。


もっとも、飯田君は、司法書士業界の保護も付け加えている。







飯田委員 裁判所事務官とか書記官とか、法務事務官、検察事務官、こういう職におられる方々は、恐らく定年になられたときにほかの仕事におつきになる分野が非常に狭いのではないかと思いますが、いかがでしょうか。



香川政府委員 率直に申し上げまして、たとえば私どもの法務局で長年勤めていただいた方あるいは裁判書記官として苦労された方の退職後のめんどうを見るということについて、私どもの努力が足りない、力が足りないことから十分でないことは十分承知いたしております。





飯田委員 司法書士につきまして試験制度をおとりになることに対して、私は反対するものではございません。


また能力の向上ということについても賛成でございます。


ただ、ここでいまお尋ねいたしましたのは、長年裁判所の仕事、検察庁の仕事をやってこられた方々がある一定の年齢に達した以後において、それほど多額の年金、恩給があるわけでもないというときに、就職する先が非常に心細いという問題は、これは重大な問題であろうと思うわけであります。


従来公証人制度というのがございますが、公証人制度については特別の御配慮がなされておると思いますが、いかがでしょうか。



香川政府委員 公証人につきましては、現在、地方法務局長あるいは法務局の局長、部長等をやられた方につきましては、公証人審査会の議を経まして公証人に任命するということをいたしておりますけれども、これは数的にはわずかでございます。


一般の法務局の職員あるいは裁判所書記官等についてはこの特任公証人制度の道がございませんので、私どもとしては司法書士のほかに、さらにそういった退職職員の将来の職場というものを開拓することに鋭意努力しなければならぬというふうに考えております。



飯田委員 この司法書士につきましてもやはり何らかの保護政策をとっていただきたいわけです。


つまり、そうした裁判所とか検察庁にお勤めになっている方々の能力向上をするような制度を加味することによって、そうした人たちの将来の職場である司法書士というものの職場を余り圧迫しないように私はお願いをいたしたいと思うものであります。




この間に、西宮弘君と長谷雄幸久君が質問した。


特認制度について言及はしているものの、あまり意味がないので省略。






次は、日本共産党・革新共同の正森君登場。


質問者の肩書きはいちいち調べてないけど、本人が冒頭でそう言っているので、とりあえず書いておく。






正森委員 本法に関連をして土地家屋調査士法の改正も必要だと思いますが、今回それが見送られた理由はどういうわけですか。


それから、今後の改正の方向についてお示しください。



香川政府委員 司法書士法につきましていろいろの改正をするというその改正内容は、調査士法につきましてもそのまま同じように改正したらいいという問題があるわけでございます。


私どもといたしましては、同じ法務省で所管いたしております司法書士法、調査士法、しかもこれは登記手続上いわば車の両輪のような形で運営されているものでございますので、横並びということから一緒に改正すべきだと私は思うのであります。


ただ、司法書士法はけさほど来御指摘のありましたように、国家試験制を導入すると同時に特認の制度を設けておるわけでございますが、調査士法は、現在国家試験制になっておりますけれども特認の制度がないわけでございます。


本来、そういう面から申しまして登記官は調査士の提出した不動産の表示に関する登記申請についての適否を判断するたてまえになっておるわけでございますから、したがって司法書士法との横並びを考えましても当然特認の制度が調査士法に設けられてもしかるべきではないかというふうに考えられるわけでございますが、この点について調査士連合会との間で協議が整わなかったわけでございます。


そういう次第もございまして、今回は司法書士法だけの改正にとどめて、しかし今後調査士会と協議を続けまして、幸い整いますれば早急に横並びの関係の同じ改正法案を提出さしていただきたいというふうに考えております。



正森委員 そのことにも関連いたしますが、今度は国家試験を行うわけでけが、国家試験の合格者と、いままで特認特認と言われておりました人々との比率ですね、それは現在どれぐらいで、将来試験が行われる場合にその比率をおおむね維持されるのか、あるいは漸次国家試験合格者優位の方に変えていかれるのか、その辺のお見込みについて御答弁をお願いします。



香川政府委員 現在は特認が1に対して一般のあれが3ぐらいの割合だろうと思います。


これは今朝ほども御議論ありましたように、司法書士の需給関係と申しますか、そういう面も十分配慮しなければならないわけでございまして、恐らくは今後も特認と国家試験合格者の比率は同じような状況ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。



正森委員 いままでは、法務局あるいは地方法務局の長がいろいろ特認を行うとかあるいは認可するということで、司法書士の地域的偏在を防いでいくというメリットがあったと思うのですが、今度から国家試験ということになりますと、恐らく国家試験合格者は当然全国的にどこででも開業ができるということになるだろうと思うのですね。


そのときに、地域的な偏在を避けて国民の需要にこたえるために、比較的過疎地にも配置されるというためには、どういう手だてを考えておられますか。


そのために特認制度が活用されるか、あるいはその特認制度については一定の地域を限って営業を認めるということになるのですか、そこら辺を答えてください。



香川政府委員 その点が現在の認可制と国家試験とのいわば一つのメリット、デメリットの絡み合うところなのでございますが、幸い特認の制度が維持できるといたしますれば、これは法務事務官、裁判書記官のみならず、それらと同等以上の能力を持っておる者も特認の対象になるわけでございます。


そういう過疎地と申しますか、司法書士がいないような地域については、役所をやめる職員でそこが郷里の人はそこで開業をするということで埋めることもできましょうし、また地域住民の要望によりまして、たとえば村役場に長く勤めておる人でそういう登記の嘱託手続に熟練しておるというような人もおるわけでして、そういう人たちがその出張所の管轄内で事務をやるという条件で、これは紳士協定のようなものでございますけれども、そういう条件つきで特認の制度を活用するというようなことを考えておるわけでございます。



正森委員 いま紳士協定ということを言われましたが、そうすると、今度法が改正されると、それが明白な条件ということは無理であるということを含んでおるのですか。



香川政府委員 これは現行法におきましても、法律的にこの地域に限ってというふうな認可は――法務局、地方法務局の管轄区域を異にする場合は改めて認可が要りますけれども、管轄区域の同じ区域内で転々と動かれる場合に法律的に資格を奪うということは、こじつければできないことはないと思いますけれども、それはやはりやるべきことではない、だから、その面で紳士協定と申し上げた趣旨は、現行法におきましてもあるいは改正法におきましても私は変わらないと思いますし、また変えるべきではないというふうに思っております。




正森委員 試験の内容の問題ですが、この条文にはいろいろ規定がございまして、憲法の点は入っておらないけれども、他の条項の常識的な問題として入るというように言われましたが、実務のベテランとされている方が受けた場合に、しばしば、実務は非常によくできているのだけれども不思議に試験になると落っこちるということを聞くわけでありますが、司法書士試験の目的にかんがみて、もちろん実務ができても理論は何もわからないというのでは困りますが、主として実務に即した問題を出していくということがこういう試験制度には大切な面もあるのではないかというように思いますが、そういう傾向についてはどういうぐあいにお考えになっておりますか。



香川政府委員 お説のとおりでございまして、私ども現在やっております統一試験においてもしかりでございますが、今度の国家試験におきましても一そういう実務面にウエートを置いた試験をやるべきものだ、司法書士というのは実務ができなければ幾ら知識があっても意味がないものですから、実務面に重点を置いた試験をやるべきだというふうに考えております。



正森委員 特認者制度というものが設けられて、いままでの5年の経験が10年の経験になりました。


しかし、実際問題としては5年の経験で認可されている方はきわめてまれで、長い方は10年、20年、中には30年という方もおられましたから、5年が10年になったということで大きな差異はないと思いますが、選考基準としてどのようなものを考えておられるのか。


私がこのように聞きますのは、特認者制度が法務当局の労務管理として乱用されるのではないか、私のような者は恐らく香川民事局長に認められないのではないかというような気もするので、選考基準としてどういうものを考えておられるか、もし明らかにできれば概略をお示しください。



香川政府委員 現在、大体のところ、役人としての経歴が20年以上たっている者が特認ということになっておるわけでございますが、ただ形式的に20年たっているからということでそのまま認めるということではなしに、やはり法務局の事務官でありましても、登記いちずに来た人もおられますれば、会計、総務系統の仕事ばかりしておった人もおるわけでありますから、それぞれ経歴によりまして、やはりその都度法務局において選考試験を行いまして、それで基準点に達した者について特認を与える、こういうふうなやり方をとっておるわけでありまして、これは今回そういう経歴のほかに「法務大臣が司法書士の業務を行うのに必要な知識及び能力を有すると認めたもの」ということを法律上はっきりいたしまして、したがってこの趣旨に沿って特認制度を運用していこう、こういうことでございます。





特認ではないけれど、司法書士との癒着問題を切り出す正森君。


おもしろい。


組合べったりなのは共産党だから仕方ないけどね。





正森委員 現在の司法書士法でも懲戒の制度がございます。


懲戒の点について伺いたいと思いますが、具体的に例を申し上げますと、私はここに新聞を持ってきておりますが、東京都の住宅供給公社の登記事務に関連して贈収賄事件が起こったというのが本年の2月の段階での新聞に多数載っております。


これは東京都住宅供給公社が登記をしなければならないが、それを一括して司法書士に代行させておった。


名前をこの速記録に載せるのはお気の毒ですからA氏としておきますが、そのA氏は主として供給公社から仕事を任されておったが、それをいいことにして供給公社の管理部管理課のBという男と、それから同じく供給公社のCという男がそれにつけ込んで、車を買いかえたいのだがというようなことで暗に金品を要求する、やむを得ず車を買ってあげる、あるいは飲み食いに行って飲食店のツケを全部回す、はなはだしきは飲みに行くのは必ずしも供給公社の役員だけではなしに、法務局の登記関係の役人が一緒に同行して飲んだり食ったりする、一カ月に150万円もツケが回ってくるという場合があった。


初めは自分の方に仕事を回してほしいと思ってやったが、しまいにはいや気が差して、実際上は接待を強要されるというような事態になってきたのだというようなことが報道されておるわけであります。またこの2人の職員を連れて熱海へ23日の旅行に招待した。


しかし、それは暗に、この招待をしなければ、司法書士はたくさんいるので何もおまえにだけ仕事を回さぬでもいいのだぞということをほのめかされたので、余儀なくそういうようにした、こうなっておるのです。


 この事件を見てみますと、都の住宅供給公社の仕事を請け負うと1年間に3980万円も仕事が来る。


だから150万円ぐらい月に接待しても半分は残るというようなかっこうで司法書士さんはそういうことをやったというように報道されておるわけですね。


こうなりますと、この問題のAという司法書士もこれは贈賄の被告になっておるわけですからいかぬと思うのですが、その根本原因は何であろうかというように考えますと、都の供給公社の担当者の心がけが非常にけしからぬということと、それから、なぜこの人に集中したかといいますと、このごろは登記事務が非常に渋滞しておって、報道を見ますと一つのことで1週間も10日もかかるという場合がある。


ところが法務局の役人につけ届けをしておる、あるいは一緒に飲みに行くということになりますと非常に迅速にやってくれる。


そこで、あの司法書士さんのところへ頼むと早いということで、これを俗な言葉で特急料と言うのだそうでありますが、特急料が非常に高くつく、とうとう手が後ろに回るというようなことになったんだということが報道されておるわけです。


 そこで、私は伺いたいと思うのですが、この人物の場合には懲戒としてどの程度の処分が行われたか、あるいは法務局としてはこの問題の一緒に飲み食いをした都住宅供給公社の管理職の役員だけではなしに、それに同行してキャバレーなどでいい目をした法務局の職員はどういう処分を受けたのか、その点を伺いたいと思います。



香川政府委員 ただいまのA司法書士、これは調査士業務も関連しておるようでございますが、現在東京法務局におきまして中身の調査中でございまして、これは実は調査中というよりは調査はもう完了しておるわけでございます。


ただ、いまお言葉にもありましたように、公社の職員と一緒に法務局の職員が接待を受けたということではなしに、Aという司法書士のそういう公社との関係が明らかになってまいりましたので、私ども、あるいは役所の職員とのそういう供応関係もあるのじゃないかということで調査いたしまして、これは幸い軽微なものしがなかったようでございますけれども、しかしやはり綱紀粛正ということが根本の大事な問題でございますので、さようなAという司法書士に絡まる役所関係の職員の処分をまずしなければならぬ、それから民間に移るべきだ、こういう順序を立てまして、現在東京法務局から関係の役所の職員についての懲戒処分の内議が本省に来ております。


いま私どもで検討中でございます。それが済みますれば、次はAという司法書士の懲戒処分を当然考えることでございまして、準備はいたしておりますけれども、民間から先にやるというのはやはり形としてはおかしかろうということで、役所の内部から先にやるべきだということで、現在処分内容を検討中でございます。



正森委員 私は、司法書士さんのこういう不幸な事件について、ここでとことん追及をしようと思っているのじゃなしに、そういうことが行われるのについては、特急料と言われるように登記事務が非常に停滞している、それは登記関係の職員の人員が足りないとか、あるいは一部に登記業務にコンピューターを導入してはどうかというような声も出ているようでございますけれども、結局いろいろの人員だとかあるいは施設の不十分さというところからそういうものが生じやすい。


もちろんそれだけではなしに、人間の心がけが一番大事でございますが、そういうような気がいたしますので、聞いているわけであります。





引き続き、正森君から民事法務協会批判がされる。


この種のネタは別項目でそのうちまとめるつもりだが、面白かったので引用しておく。





 そこで、その関係でもう一問聞いておきますと、登記協会というのがあるようですね。これは一体どういうもので、どういう仕事をしておるのですか。



香川政府委員 これは、現在は民事法務協会というふうに名前を変えておりますが、これは民法法人でございます。


その仕事の内容といいますのは、いま御指摘の登記事務が非常に遅れる、これは人員不足からくるわけでございまして、その人員不足を少しでも他の方法によってカバーする方策の一つといたしまして、先ほども申し上げましたが、謄抄本の作成の過程におきまして、コピーで謄抄本を作成しておるわけでございます。


これは全く機械的な仕事でございますので、その面を民間に委託するというふうなことで急場しのぎはできないであろうかということが検討されまして、そして、民間といっても、何しろ登記所の中で登記簿というものをいじるわけでございますから、単に複写作業に従事するといってもだれでもいいというわけにはまいらないということから、登記協会というものが財団法人として設立されまして、それにコピーの作業を委託するということでやってまいっておるわけであります。


現在そういうだけの仕事をしておる財団法人ということでございます。



正森委員 いま御説明がございましたが、ここに法学セミナーの「司法書士」という欄の時評のようなものが載っているのですね。


その中で、いろいろ取り上げられておりますが、そのうちの二つだけ紹介しますと「「立ちんぼ、イライラ、待つのは常識、登記官のミス続発、謄本とり記載の再確認を」。」というようなことが言われて「東京では、登記事件の処理に10日以上を要する登記所が数カ庁にのぼっている。


この場合、受け付けられた登記事件が登記簿に記載され、現実に公示されるまでに1週間以上を費やすことになる。」こういう状況があるので、先ほど私がAという司法書士を挙げましたが、特急料が必要になってくるということになるわけです。


 そこでもう一つは、登記協会の、いま香川民事局長が言われた点についてもこういう記事があるのです。同じく法学セミナーの記事です。


「すべての公益法人がそうであるように、この協会も至極もっともらしい言辞で目的を掲げている。この協会の設立者および理事は、すべて元法務省高級官僚(元法務局長、地方法務局長等)により占められており、法務省との連繋動作によって設立に至ったことは一点の疑う余地もない。」


中略


「当面第一には激増する登記事件のうち、乙号事件(登記謄抄本の作成)の受託処理に当たっている。乙号事件の処理については、登記所の慢性的労働力不足を解消すべく、法務省はすでに一部繁忙庁において民間企業にその作業を請負わせるという変則的な苦肉の施策をとってきたが、この協会成立とともに、ただちに発註先を外部民間企業から身内たる協会へと変更した。」


中略


「以上の事実と企画を概観しただけでも、この協会の本質は公益法人というよりも、法務省の外局であると称しても過言ではあるまい。」


こういうふうに書いてあるのですね。


私は、ここに書かれてあることを全部本当だとは思いませんけれども、しかしこういう指摘があることも事実であります。


私は、本来はこういうものは、組合との十分の相談のもとに、納得の得られる範囲でコンピューターを導入するか、あるいは組合との相談で一定の人員を増加するかということで、国の責任で問題を解決するのが筋道ではなかろうかというように思うわけですが、法務大臣なり民事局長の御所見を承りたいと思います。



香川政府委員 登記協会、現在の民事法務協会についてお読みいただいたようなことは大分事実と違っておりまして、財団法人の役員は確かに元法務局長、地方法務局長になっていただいておるわけであります。


全くの無報酬でございまして、しかもこれは、そこにもありましたように、最初民間のああいう複写機を製造している会社に発注したようでありますが、高くついてしょうがない、これはとても金がかかってかなわぬということで、そこで先輩であるそういう元法務局長、地方法務局長の方々にお願いして、そして適宜の金子を拠出していただいて財団法人をつくって、しかも無報酬で、いわば先輩として法務局のためにひとつお力添えを賜りたいというようなことで始まっておるわけでございまして、だから決してそんな天下り先とか、あるいはそこで報酬をむさぼっているというような実態は全くございません。


ただ私も、そういった乙号事務の一部を、財団法人であってもそういうものに請け負わせることの是非ということはいろいろ問題があることは承知いたしておりますけれども、何分にも現在の法務局職員の負担過重、それがひいては国民に非常に迷惑をかけておって、登記が10日もかかるというような事態もまれにはあるわけでございまして、そういうことを解消する当面の策としては、やはりそういった機械的な作業だけを民間に委託してやってもらうということはやむを得ないことではなかろうかというふうに考えておるわけでございまして、今後増員その他の、いわば正規の形のそういう措置が講ぜられるまでの間は、この委託という形は続けていかざるを得ないというふうに私は判断いたしております。