S53/06/15 参議院 法務委員会



寺田熊雄君


vs


法務省民事局長  香川 保一君




寺田熊雄君 


 そこで、次に司法書士法の問題について質問をいたしたいと思います。


現行法上司法書士は、法務局長または地方法務局長の選考によってする認可を受けなければ司法書士になれないことになっております。


これは現行法の4条であります。


その選考というのは従来どうであったのか。


試験を意味したのか、あるいは普通の意味の学科試験を前提にしたものか、あるいは何らか他の方法によっていたのか、そういうふうなことをちょっと御説明いただきたいと思います。



政府委員(香川保一君) ただいま御指摘の認可制度、認可によって司法書士の資格を与える、かような制度は戦前からあったわけでございまして、当時は地方裁判所長が認可しておったわけでございます。


その当時は選考というふうなことはどこにも出てなかったわけでありまして、戦後司法書士の品位の向上、あるいは能力の増進、業務の改善というふうないろいろの要請からやはり実質、試験をして知識もやはりためさなきゃいけないというふうなことから、選考して認可するというふうな改正が司法書士法の施行規則でなされたと記憶いたしております。


したがって、この場合の選考というのはそういう意図で入ったことでございますので、実施といたしまして筆記試験もやり、口述試験もやるということでやってまいりました。


ただ、地方法務局長のばらばらの試験ではやはり不均衡な面もございますので、そこで筆記試験につきましては全国の統一の筆記試験をやるということで、具体的に申し上げますれば本省におきまして問題を作成してその問題によって各地方局長が選考試験をやる、こういうふうに運用してまいったわけでございます。



寺田熊雄君 その場合、5年以上裁判所事務官、法務事務官、裁判所書記官、検察事務官などをいたした者はそれ以外の者と選考方法を異にしたのでしょうか、その点いかがでしょう。



政府委員(香川保一君) この選考試験、先ほど申し上げました全国統一的に筆記試験をやるというときにばらばらに一般的に認可申請が来ました都度やるというふうなことは技術的にはとてもできませんので、毎年1回大体時期を決めまして一般的には先ほど申しました統一試験をやっておるわけであります。


ところが、裁判所書記官あるいは事務官、法務事務官等につきましてはやはり退職の問題があるわけでございまして、退職して司法書士になりたいというふうな要望があるわけでございまして、したがって、これは大体役人のやめる時期というのは4月かあるいは12月というふうなそれぞれの組織によって若干違いますけれども、まとまっておやめになるわけでございます。


したがって、そういう時期に先ほど申しましたような選考試験をある程度まとめてやるというふうな運用をしておるわけであります。


もちろんそういう方がやめる時期が一般の試験実施のときにあれいたしますれば、その試験を受けてもらうということができるわけでございますけれども、やはり年に1回しか統一試験を行いませんので、それまでやめてから数ヵ月待たすということもいかがかということでそういった先ほど申しましたような随時人がある程度まとまればそこで適宜の試験をするというやり方をしてまいったわけでございます。



寺田熊雄君 そうしますと、いまのまあいわゆる特認というような言葉を使っておるようですが、法務事務官、それから裁判所書記官をした人々、その方の扱いというものが一般の司法書士ではございませんが、司法書士会の中の若干の諸君の非常に不服があるようなものだったのですけれども、この改正法ではその点はどういうふうに扱おうとするのか、法案は私どもよく読んでおりますけれども、民事局長がこの法案を審議するに当たって片や司法書士会の面の要望というものも取り入れなければいかぬ、それから登記事務に携わっているかわいい局長の部下の方々、組合の方々の意見も取り入れなければいかぬ、大変御苦心が要ったと思うのですよ。


どういうふうにするのが最善だと考えられたのでしょうか、いかがですか。



政府委員(香川保一君) この国家試験制を導入しました趣旨は、御承知のとおりやはり司法書士の資質をもっと高めなければならない、非常に国民生活に密着した重要な仕事をしておるわけでございますので、国民に御迷惑のかかることのないようにしなきゃならぬと、そういうことのあらわれの一つとして国家試験制の導入ということがあるわけでございます。


 したがいまして、ただいま仰せのその裁判所書記官、法務事務官等のいわゆる特認の制度をどうするかという問題、この国家試験制の導入で、それがどういうふうな調整と申しますか、考え方を持たなきゃならぬかという点が一つ大きな問題であったわけでございますが、やはり国家試験制を導入する以上は、その趣旨に沿うものとして特認制を残すにしても、現行法のように裁判所書記官あるいは法務事務官5年ということではいかがなものだろうかというふうに考えまして、形の上では5年を倍にして10年以上ということにしてその調整を考えたわけでございます。


 さらに、まあ率直にこれは申し上げまして、私どもの努力が足りないというか、力がないということだと思いますけれども、裁判所の――あるいは私から申し上げるのはあれでございますけれども、実際長年法務局におきまして忙しい仕事をしてきた職員の――大体60前、5556から60前ぐらいで退職していただくわけでございますが、その人たちの退職後の職場というものを私ども十分準備する力もない、努力が足りないと思っておりますけれども、まあ唯一司法書士というふうなものがその退職後の職場としてあるわけでございます。


したがって、やはり長年法務局であるいは裁判所であるいは検察庁で苦労された職員が司法書士としての能力、知識を備えているならば、やはりそれ自体特認とも申しますか、さような一般の国家試験を受ければいいじゃないかというふうなことではなしに、やはりそこに一種のやめた後の希望といいますか、そういうことがやはり在職中の士気にも影響することでございますし、さようなことをいろいろ考えまして、御提案申し上げているような国家試験と、それから一定のそういった裁判所書記官、法務事務官で10年以上たった方について、法務大臣がこの人なら司法書士としての能力、知識を持っておるというふうに認定された者についてやはり国家試験と同様の資格を与えるという制度を取り入れておるわけでございます。


 御参考までに申し上げますと、10年ということにしておりましても、これは一部誤解があるようでございますけれども、10年たったら当然なれるのだというふうなものではもちろんないわけでございまして、しかも、実際10年というのは最低の法律上要求されておる資格でございまして、実際の運用は大体20年前後経験された方についてこの法務大臣の認定試験をするというふうなことを考えておるわけでございまして、決して身内について不公平なと申しますか、有利な扱いをするというふうな考えは毛頭ないことだけはひとつ御了解賜りたいと、こういうふうに思います。



寺田熊雄君 確かに司法書士試験という名称の国家試験を法務大臣が行うというふうに改められたことは、これはよかったと思います。


が、ただもう一つ、いまの局長が後でお触れになりました裁判所事務官、書記官、法務事務官、検察事務官などの職務に従事した者が「司法書士の業務を行うのに必要な知識及び能力を有すると認めたもの」という条文になっておりますが、そういうふうに認めるに当たりましては何らかのやはり判定の基準というようなものが必要だろうと思うのですが、これは何かあるのでしょうか。



政府委員(香川保一君) これは法務事務官と申しましても、極端な例を申しますと、庶務、会計的な仕事ばかりしてきたという人もないとは言えないわけでございまして、あるいは登記だけやってきたというふうな職員もおるわけであります。


まあ司法書士の業務は登記、供託あるいは裁判所、検察庁に書類を提出するようなそういう仕事でございまして、範囲が広いわけでございます。


したがって、そういう職歴も考えながらやはり適宜の試験をいたしまして、そしてそれによって、具体的に申しますと、まあ何点以上とらなきゃだめだというふうな基準で、大臣の選考といいますか、認定ということをやってまいりたいと、かように考えておるわけでございます。



寺田熊雄君 なるほどそれは試験とおっしゃるのは法務大臣がもちろんやるのでしょうが、たとえば年に1回とかあるいは随時行うとか、あるいはどういう学科について行うとか、いや学科でなくては口頭試問だとか、いろいろあると思うのですが、いまの大体局長の、お決めになったのか、あるいは頭で考えていらっしゃるのか、どちらでもよろしいから、その大綱をちょっといま御説明いただきたいと思いますが。



政府委員(香川保一君) 現行の特認制度のもとでもある問題であることは先ほど申し上げましたが、やはり年に1回だけではちょっと足りないだろうと思うのであります。


やはり年に少なくとも2回ぐらいは一まとめにして先ほど申しましたような試験等を行う、この試験は法務大臣が行う試験でございますけれども、実際は法務大臣から一応法務局長に委任してやらせるというふうなことを考えておるわけでございます。


ただ、現在も同じでございますが、ばらばらにやったのでは不公平になりますので、したがって、本省で問題をつくって、それで、各実施は地方法務局でやってもらうというふうなことを考えておるわけでございまして、この場合の試験委員というものをどうするかという問題があるわけでございまして、これはまだ具体的には考えておりませんが、一般的な国家試験の試験委員というのがあるわけでございますから、その方々にはお気の毒ではありますけれども、全員というわけにはまいらぬと思いますけれども、毎年1回行う正規のというか、一般的な国家試験の試験委員の方から何人かお願いしてやってもらうというふうなことも考えておるわけでございます。



寺田熊雄君 余り一つの問題で深くいきますと時間がこれなくなってしまうので……。


 司法書士の人数ですが、これは43年から52年までの10年間に、局長の方からいただいた資料によりますと、12130人から14512人にふえております。


ふえた人数は2382人ですから、増加率を計算してみると19%、これは資料の2ページにあるわけですね。


ところが取扱事件数というものを見てみますと、これは大変ふえておるわけですね。


43年と52年のいまの10カ年を見てみますと、事件数で5438件ふえておる、34%の増加、乙号登記事務に至っては134636件の増加、先に申し上げたのはあれは甲号事件についてお話しした。


乙号事件の方は134636件の増加でこれは88%の増加です。


いまの10カ年の職員増をとると10447人が11740人にふえて1293人の増加ですから、わずか12%。


なるほどこの件数の増加に比べて職員の増加というものが大変違いますね。


職員の増加も非常に少ない。


それから、さっき申し上げた司法書士の増加は、職員の増加の12%と比べますと、19%ですから、やや増加率は高いということが言える。


いま職員の増加と司法書士の増加とは同じ水準で比べることはちょっと無理かもしれませんが、どちらも事件数の増加と比べると、はるかに低いわけですが、もっと司法書士をふやす必要はないのでしょうかね。


これはどう考えられますか。


これは局長もよく御存じでしょうが、われわれ裁判官それから弁護士、主として弁護士についてよく言われますね、法曹人口の増加の問題というのが。


これは、最高裁が最初、司法試験の合格率を、昔は、戦前などは大体300人ぐらいだったものですがね、毎年。


最高裁判所はそういう法曹人口の全体をとらえてみて、最近は500名以上にふやしていますね。


そういう配慮を考えますと、司法書士の問題も、司法書士人口と言うとおかしいけれども、何か配慮を要するようにも思えますが、どうでしょうかね。



政府委員(香川保一君) 結論的に申しますと、国家試験を導入いたしました場合に、これは御案内のとおり資格試験でございますので、司法書士の業務量との調整を図るというふうなことが入る余地がない問題なんでございます。


やはり国家試験を導入いたしました場合に、いま仰せのように、司法書士をふやすか、あるいはある程度限定するか、その辺がやはり業務量との関係で非常に問題があると思うのであります。


その辺のところが、実際現在、結論的に申しますと、寺田委員は少しふやした方がいいのじゃないかということでございますけれども、登記事件の増加分というのは、これは主として公共嘱託登記事件が大幅にふえてまいりましたので、これは現在は司法書士の手を経ていないわけでございます。


官公署にそれぞれそういった関係の従事職員がおられまして、その人たちがそういう仕事を直接やっておるわけでございまして、この問題は、そういったことを司法書士の業務の中にだんだん取り入れていくという問題が一方にあることは間違いないということでございますけれども現在そういう状況のもとで、私は、司法書士の数というのは、特に大都市におきましてはもう飽和状態になっておる、したがって、これ以上ふえてくると、ますます過当競争と申しますか、そういった品位の保持に欠けるようないろいろの問題が出てくるのじゃないかということを実は心配いたしておるわけであります。


 他方また、地方に参りますと、極端な場合には、過疎地帯におきましては司法書士が一人もいない、そこで地域住民は非常に御不便されるというふうな問題があるわけであります。


 今日のような、地方法務局長の選考、認可ということでありますれば、その辺のところは弾力的に運営できることではございますけれども、国家試験制を導入した場合に、そういった点をどうするかということがこれからの一工夫要る非常に大事な問題だというふうに考えておるわけであります。


したがいまして、まだ具体的にどうすればいいか、私も自信のある案はございませんけれども、やはり業務量の増加あるいは減少に応じて何らかの調整をしないと、かえって過当競争等々の非行の結果、国民に御迷惑をかけるようなことにもなりかねないということで、その辺のところはいろいろ工夫してみなきゃならぬというふうに考えておるわけでございます。



寺田熊雄君 局長、非常に純粋理論的なお答えをなさったわけだけれども、弁護士なんかの法曹人口、まあ裁判官も含めて、検察官ももちろん含めて考えて、日本は法曹人口が西ドイツあるいはアメリカ合衆国などと比べて非常に少ないということで、戦後、あれは20年代の終わりからだったですかね、あるいは30年代に入ってからでしたか、司法試験の合格者の数を従来の300人程度から500人以上にふやしたのはそういう政策的な配慮があったわけで、一遍に成績がよくなったというのじゃないのですよね。


だから、これは医者の制度でも同じことで、医者が少ないからといってやたらにふやすことはできないという、これは純理論ももちろんあるわけで、それも非常にもっともな意見だけれども、余り試験をむずかしくて、社会的需要に応じられないということでも困るので、その辺の調節がむずかしいと思うのですよ。


局長はいまはむしろ――これは私は決してふやした方がいいという意見を局長に押しつけているわけじゃないので、足りないとすれば試験を多少やさしくしてもふやすべきではないだろうかということなんです。


ところが、局長は、いやむしろいま過当競争の状況ですと言われるから、そういう実態ならまた話は別になりますね。


しかし、それはやはり司法書士会とか司法書士会連合会とかあるいは消費者と言っちゃなんだけれども、一般の需要者、そういうものの意見を十分慎重に聞いて出した結論でなければいけませんわね。そういう調査は現実になさっておられるのですか。



政府委員(香川保一君) この問題が端的にあらわれてまいりますのは、司法書士の手数料を幾らにするかという問題の際に出てくる一つの大きな問題なんであります。


御承知のとおり、現在各司法書士会におきまして司法書士の手数料を、所有権保存登記は幾らというふうなことを決めるわけでございますが、これが法務大臣の認可制になっておるわけであります。


で、ある程度全国統一的に手数料を決めなければなりませんので、その際、地域ごとに一体司法書士がどれくらいの事件数を扱っておるか、その現在なら現在の手数料で一体どれくらいの収入があるか、あるいは必要経費がどれくらいかかるかというふうなことを相当詳細に調査しまして、そして手数料の改定をすべきときはするというふうなことを積み重ねてきておるわけであります。


最近やはり同じように司法書士会からは手数料の引き上げと申しますか、その要請が参っておるのでありますけれども、私どもそれに対処するためには、先ほど申しましたいろいろのデータを集めまして、引き上げるべきかどうするかということを考えなきゃならぬ。


その際のいろいろな調査の結果を見ますと、地域的には若干の差はございますけれども、相当、司法書士の平均的な報酬というのは、事件数が若干減っております関係から、落ちこぼれておるというふうに見ておるわけでございます。


そうかと申しましても、これ結局手数料は、引き上げますと、その負担は国民がするわけでございますから、したがって、やはりこういう公共的な仕事であり、しかも司法書士法という法律によってほかの人ができない独占的ないわば企業でございますので、余り司法書士の方ばかり考えて手数料を上げるということもやはり問題があるわけでございます。


そういうことからやはり手数料の額を基準にしまして、それを軸にして片や業務量、片や司法書士数というふうなことを常にてんびんにかけて考えなきゃならぬという問題であるわけでございます。


そういったことからも相当きめの細かい調査はいたしておるわけでございます。



寺田熊雄君 この改正法の第6条の2の第2項の第3号を見ますと、「司法書士の信用又は品位を害するおそれがあるときその他司法書士の職責に照らし司法書士としての適格性を欠くとき。」、こういう場合には第2項は登録を拒否しなければならないということになっておりますね。これは法務局長に登録拒否を義務づけているわけです。この第3号というのは具体的に言うと、これは一般的な規定としてはよくわかるのだけれども、多少その運用をする人のその人柄のいかんや政策によっては乱用の危険もありますね。これは何かしぼりが必要なようにも思うのだけれども、運用に当たってはどういうふうな配慮をするおつもりなんでしょうか。



政府委員(香川保一君) この6条の223号は、たとえば司法書士の国家試験に合格したと。この合否を決めるのは単なる筆記試験だけの結果でございまして、たとえばその人が現に刑事事件で刑事公判が係属中だとかいうふうなことは、これは国家試験の合否に影響は何らしないわけでございます。そういう人が試験に合格したときに登録申請が出てまいりますと、やはり現に刑事犯罪事件で刑事公判が係属中のものを司法書士に登録するということはいかがなものかというふうに考えられますので、そういったことを念頭に置いて設けた規定でございます。もちろん非常に抽象的でございますので、各法務局長、地方法務局長の運用いかんによっては不均衡になろう点もございますので、この法律が施行になりますれば一つの運用基準としての通達を出すことも考えておりますし、しかも内部的なそういうことだけではやはり公正が担保されない、公正らしさというものが担保されないわけでございますので、この法律案の6条の5の規定をごらんいただきますとわかりますように、司法書士会の意見も聞くというふうなことにいたしておるわけでございます。



寺田熊雄君 次に、司法書士と並んで登記事務に携わる職種として土地家屋調査士というのがおりますね。この土地家屋調査士についての法律は土地家屋調査士法というのがあります。これは大体司法書士と同じような趣旨で制定されておるわけであります。本法の改正に当たってはこの土地家屋調査士法も大体同趣旨の改正をなすべきではないかというふうに考えるのですが、この点いかかでしょうか。



政府委員(香川保一君) 今回御審議いただいておりますこの司法書士法の中身としまして、やはり同種の規定を土地家屋調査士法に横並びとして設けた方がいいというふうに考えられる規定が多々あるわけでございます。


したがって、私どもも司法書士法、調査士法両法の同趣旨の改正をしたいというふうに考えておったわけでございます。


御参考までに申しますと、土地家屋調査士法は制定以来国家試験制をとっておるわけであります。


その点はすでに司法書士法よりも先行しておるわけでございますが、そのほかの点については、大体いままで司法書士法と調査士法は横並びを考えて同時に改正をしてきておる経緯もございますので、今回もさようにいたしたいというふうに考えたわけでございます。


あからさまに申し上げますと、司法書士法との横並びから申しまして、現在の土地家屋調査士法に特認の制度がないわけでございます。


これはちょっと細かなことで恐縮でございますが、戦後土地台帳、家屋台帳が税務署から登記所に移管になりまして、土地台帳、家屋台帳において不動産登記制度の基礎としての不動産の現況を明確にするというふうなことになったわけでございます。


その土地台帳、家屋台帳の登録事務、登録の申請手続等をやるものとして土地家屋調査士法というのが制定されたわけでございます。


したがって、その当時は法務局の職員でもそういった測量とか現場の調査というふうなことは何もしてなかったわけでございますので、そういうことを考えた場合に、特認の制度を設けるのはいささか実力が伴わないことになるわけでございます。


しかし、今日はもうさような制度ができて30年近くなるわけでございまして、法務局のその面の仕事を担当しておる職員も相当そういった測量等の技術も身につけておりますし、全体的にはまだまだレベルは低うございますけれども、そういった職員も徐々にふえてきておる状況にあるわけであります。


したがって、そういった職員の士気を鼓舞する意味から申しましても、調査士法の中にやはり特認制度を設けた方がいいと。


つまり、そういった仕事をしておる職員は土地家屋調査士が現場を測量調査して、その結果を登記申請という形で提出してまいりました場合に、その適否を判断することになっておるわけであります。


だから、たてまえから申し上げますと、調査士よりもそういった担当職員はそういった知識が上でなけりゃならない仕組みであるわけでありますが、なかなかしかし実際問題としてそこまでの力が全部の職員についてるというわけじゃございませんけれども、そういった力をつけていく上におきましても、やはり司法書士法の方が特認制度があるのと対比して、調査士法にはないことから、職員のそういった対応業務についての研さんがどうしても鈍りがちということも否定できないわけでございますので、そういった面の職員の能力をさらに充実させていくというふうな意味からも、ぜひとも特認制度を調査士法に設けたいというふうに考えたわけでありますけれども、調査士連合会等からそれは反対だというふうな意向表明がございまして、いろいろ検討しまして、私としてはそこのところはなかなか了解が得られないならほかの部分だけでも横並びの問題はやはり改正したいというふうに考えておったのでありますけれども、いろいろの事情で提案できないような結果になりまして、できるだけ早くびっこな状態は解消しなければならぬというふうに考えておるわけでございます。



寺田熊雄君 いまは土地家屋調査士会もその特認制度を取り入れるということは了承しておるようですね。


どうでしょうか。


そして、もしその点の障害が最も困難な障害であったということになりますと、いまは了承しているということになりますと、土地家屋調査士法の改正というものはきわめて容易であり、かつまた必要であるということになりますが、その見通しですね、たとえば次の国会までには提出できるというような見通しがありますか。


それはまだ無理ですか。



政府委員(香川保一君) 特認の制度の問題について、私は十分勉強された調査士の人たちは賛成していただいていると思うのであります。


しかし、私どもの不徳のいたすところと申しますか、連合会としては表面的には反対ということをまだ崩していないわけでございまして、これからいろいろ接触いたしまして理解を得た上で対処したいと、したがって、ここで次の通常国会に提案できるかどうか、まだその辺のところが関連してまいりますので何とも申し上げかねる次第でございます。



寺田熊雄君 民事局長としては特認制度をやはり土地家屋調査士についても認めた方がいいとお考えなんでしょうね。


これは法務局職員で構成されている全法務労働組合ですか、これは希望しているようですね。


それから土地家屋調査士会の役員の方の御意見を伺いましても、その点については反対はあったのだけれども、いまは非常に緩和してきた、したがって、その点に固執してその余の規定を土地家屋調査士法に入れないと、何か司法書士と比べて若干不利益をこうむるのではないかという、そういう意見を持っておるように、私の誤解でなければそういうふうに聞いたのだけれども。


だから局長としてはやはり特認制度を入れて、そして司法書士並みの法改正をした方がいいという、そういうお考えなんでしょう、あなたとしては。その点、いかがです。



政府委員(香川保一君) 私といたしましては、特認制度も取り入れた司法書士法と横並びの同じような趣旨の改正をした方がいいというふうに思っておるのでありますが、しかし、いまおっしゃいましたように、特認制度がなかなか容易に了解、理解を得られない。


そうだといたしましても、やはりほかの点については改正した方がいいことは間違いないわけでございますから、特認は少しおくれるにしましても、ほかのところはやはり横並び、同じような改正をしたいというふうに考えておったのでございますけれども、いろいろの事情がございまして少し待てというふうなことになっておるわけでありまして、だから確かに司法書士法と調査士法を比べますと、まあこの司法書士法が可決成立させていただきますれば、ちょっとびっこになりまして、何かちょっとこう特認制度に反対したためにまま子扱いしているような感じを受けるわけでございまして、これは私としては非常に心外な限りでございまして、そういう状態というのはなるべく早く解消したいというふうに考えておるわけでございますが、他方、法務局の職員から見ました場合に、これだけ一生懸命やっているのだから司法書士法と同じように調査士法についても特認制度は設けてほしいというのが長年の願望でございますから、何とか努力してそこのところも調査士会の了解を得て特認制度も取り入れた法案をできるだけ早く出したいと、こういうふうに考えておるわけでございます。