S54/05/08 衆議院 法務委員会



飯田 忠雄君


山崎武三郎君


横山 利秋君


vs


法務省民事局長 香川 保一君



日本土地家屋調査士会連合会会長 多田 光吉君





今回は、特認制度と報酬改定問題がリンクしているので、この2つに絞って引用する。


なお、中略した部分には、中略した旨の注意書きを付していない。




多田参考人 昨年、所管の法務省民事局から調査士会連合会に対し、司法書士法の一部を改正するに伴い、土地家屋調査士法も横並びに改正が必要であるということから、改正案が示されたわけでございますが、改正案によりますと、調査士資格の第3条に2号を新設して「法務局又は地方法務局において不動産の表示に関する登記の事務に従事した期間が通算して10年以上になる者であって、法務大臣が調査士の業務を行うのに必要な知識及び技能を有すると認めたもの」をして、いわゆる調査士の資格を特別認可によって与えるとしております。


 連合会はこの改正案に対し、法32号を除きその他の部分については、調査士会の自主的権限の強化と調査士制度の充実強化に最も必要なものと受けとめ、改正することに賛意を表したのでございます。


 こうしたことから連合会といたしましては、次の6項について要望をいたしておるものでございます。


 第一点といたしまして、新調査士法第32号による資格認定及び調査士試験制度の運用については、調査士業務に対し国民が制度の利用を容易にするとともに、調査士が品位保持と業務改善進歩に必要な経済的基盤の確立に適切な配慮をなし、社会的需要の範囲内で運用されることを希望をいたしております。


 第五点、報酬について。調査士の報酬制度は会則の一部とされておりまして、法務大臣認可を必要とするものでございますが、報酬が、調査士の生計のみならず、取り扱い事件に関する責任保証、測量精度の保持等、その業務の実態に即した改善を図ることが必要であるといたしております。



山崎(武)委員 参考人には御苦労さまでございます。

 まず今回の法改正については、特に法務大臣による土地家屋調査士資格の認定制度について、調査士会内部に賛否両論の御意見があったようでございますが、最終的に調査士会が賛成するに至ったのは、この制度が表示登記制度の充実強化に資し、ひいては土地家屋調査士制度の充実強化につながるという高度な観点に基づくものと私どもは考えますが、いかがでしょうか。



多田参考人 お答えを申し上げます。


 そのとおりでございます。


資格の認定制度は、反対を表明したことから拒絶反応があり、調査士会内部に賛否両論がありました。


先ほど陳述の中で申し上げましたとおり、登記制度の充実が土地家屋調査士制度の充実発展にあることの理解から、表示登記事務処理に従事する職員と調査士との協調のもとに両制度の充実が図られることが必要である、こう理解されたことから賛成することになったわけでございます。



山崎(武)委員 法務大臣による資格認定制度については、この制度の導入もさることながら、これからの運用にこそ慎重な配慮を必要とすると考えます。


 この運用について、日本土地家屋調査士会連合会としてはどのような御意見を持っていらっしゃるか、お尋ね申し上げます。



多田参考人 お答えをいたします。


 法務大臣による資格認定制度の運用については、連合会といたしましては、これについて意見を述べ、会の意見を十分くみ取って、制度の発展につながる問題として慎重に配慮して、適正な運用がなされることを期待いたしております。




横山委員 ごもっともでございまして、民事局長に後で御答弁を願うことにいたしますが、かねて本委員会が積極的に主張しております公共嘱託の推進についての隘路は、いまのお話によれば、法人でなければ受注が困難であり、かつ報酬制度が一つの隘路であるというお話でございます。


これにはいろいろ議論がございますけれども、一応とにかく私も同感のことでございますから、これはひとつ後で民事局長にお伺いをいたしたいところでございます。


 それから試験制度であります。


特認制度について、これが本法をまとめる中で一番問題点になったように伺っております。


このことは、司法書士法の改正の中でもずいぶんここで民事局長と質疑応答を重ねたところでございますが、承れば特認制度の運用基準について政府は了解をなさったと承っておりますが、そのことに間違いはございますまいね。


――なければ結構でございます。


 それでは間違いがないものとして、今後この運用基準を数年後実行する上において、私は、司法書士法の改正の際に民事局長と意見の交換をしたわけでありますが、同様、本委員会において附帯決議の議論をいたしております過程で、一体、全体の司法書士、調査士の需給のバランス、社会的需要との関係、それからもう一つは、一般試験と特認によって調査士になられる方とのバランスの問題、このことは、法律にどう書きましても、運用の問題だと思うのでありますが、この特認制度と一般試験との運用について、多田参考人、連合会としては、今後どういうふうに運用されることを期待しておみえになるのでありましょうか、伺いたいと思います。



多田参考人 お答えをいたします。


 試験制度に対する注文といたしまして、私ども常に、土地家屋調査士制度が不動産の表示に関する登記手続の円滑化と不動産に係る国民の権利の明確化に寄与することを目的とするならば、土地家星調査士は、これに適合する技術と法知識を有する能力を備える者にのみ資格が与えられることが望ましいわけでございます。


こういうことにつきましては、試験制度の中では一番問題となります仕事の上での調査についての試験が十分に行われていないというように、私ども受け取れるわけでございます。


したがって特認制度につきましても、連合会から意見を添えながら、十分に運用の面に反映していただく、このように考えておるわけでございます。



横山委員 私がお伺いしておりますのは、いままでは特認はなかったわけですね。それが特認制度ができる。


特認につきましても、いろいろと細かい規定がお互いの申し合わせでできたようでありますが、それでもやはりさじかげんで特認がわっとふえる。


一般試験合格者との間の比率がぐるっと変わるということを私は実は心配をしておるわけで、特認がいかぬということで必ずしも言うわけではありません。


急激に特認がふえて、一般試験の合格者はいつものとおりだというと、調査士は非常に数が総体的にふえる。


仕事はそれほどあるのか、仕事が増大しておればそれもいいでありましょうが、その辺のバランスについて御心配はないのかということをお伺いをいたしておるわけでありますが、どうでございますか。



多田参考人 ただいま御指摘の点はごもっともなことであって、私ども反対した理由もそこにあるわけでございます。


 この点につきましては、法務当局と十分な協議をいたしまして、ある一定の試験もいたしまして、厳重な選定のもとに、的確な調査が行えるような調査士をつくっていくのだということと、もう一つには、法務行政の中にそういう将来に向かっての希望を持たして、調査士とともに表示登記の制度の充実に力を注いでいきたい、こういう考え方から特認制度を導入するということになっておりまして、この点につきましては、連合会の要望も厳重に踏まえて、そのような調査士の急激な増大をするというようなことのないように配慮をするということの合意を見ておりますので、その点は御心配がない、このように受け取っております。



横山委員 その次は、いまもお話がございました報酬制度であります。


 報酬制度についても、私どもいま理事会で、その業務の実態に即して速やかに改善を図ることという項目について議論をしておるわけでありますが、報酬制度についてどういう改善をしたらいいかという点であります。


 私の承知する限りは、土地家屋調査士会も司法書士会も、法律的、形式的には地元の法務局長に申請をする。


しかし実質的には、法務省と全国連合会との協議によってまとまったものを地方の単位会で確認をするということになっておりますのが矛盾があると、私どもかねて主張しておるわけであります。


 だから報酬制度は、法務省と連合会との協議について傘下各単位会がこれを組織の下部として了承をする。法務局長の承認は要らない。


もし地域的に必要性があるならば、全国の協議の中で地域の特殊性をうたえばいいのではないか。


こういうことが一つであり、それから二つ目には、お話しのように、報酬のいまの一つ一つの組み立て方に、業務の実態に応ずるどういう改善を加えればいいかということについて、御意見を伺いたいと思います。



多田参考人 お答えをいたします。


 報酬制度につきましては、昭和31年に土地家屋調査士法が改正され、土地家屋調査士会が強制設立をされたわけでございます。その際に、会則の一部として法務大臣の認可を要することとされたわけでございます。


 調査士報酬は、不動産登記法に定められてあるとおり、表示に関する登記申請については義務を課しております。


さらに、懈怠については罰則規定まで設けられてあることから、国民が調査士制度を利用する場合には当然その費用負担をすることになるわけでございます。


いわば調査士業務は半ば公共性を有するものとしての考え方から、公共料金に準ずるということで、均一と低額が要求をされておるというのが実態ではなかろうかと思うわけでございます。


調査士もこれによって生計を維持してその責任ある業務を行うわけでございますので、私ども業務の実態をとらえて報酬を考えた場合に、非常にアンバランスな報酬体系であるということは言われるわけでございます。


 これらにつきましては、連合会といたしましても、研究した成果をもとに法務省に提出してございまして、改善を求めております。


ただいま、各会がそれぞれ地域事情によって決議をいたしまして運用するということは、本当に望ましい姿であろうかと思いますけれども、業務の性格上統一した報酬が望ましいわけでございますので、連合会といたしまして、今後については、業務に適合する報酬の改定をしていきたい、このように考えておるわけでございます。




正森委員 それでは多田参考人に、私から若干伺わしていただきます。


 今度の土地家屋調査士法の改正に当たっては、内部的にあなたのところでは相当論議が行われたと聞いております。


特に特認制度についてはいろいろな検討が行われたと思いますが、この制度の導入についてはどう考えておられますか。


 特に私が伺いますのは、たとえば79428日の朝日新聞の「論壇」には、おたくの方の東京土地家屋調査士会副会長の大橋光雄さんが投稿されまして、その中で、土地家屋調査士の業務報酬認可権が法務大臣に所属していることを一つの奇貨として、法務省側が非常に圧力を加えてきた、それで、もしこの特認制度をのまなければ、3年以上据え置きの調査士報酬改定問題を初め、法務省と日本土地家屋調査士会連合会との間の各種協議に応じられないというようなことも言って、事実上非常な圧迫を加えた、そこでやむなくのんだのだということが書かれておるのですね。


 そうだとしますと、報酬認可権というのは、報酬が一般社会的に見て不当に高価になったり、あるいは不当に低くておたくらの生活ができないということであってはいかぬという、バランスをとるためにある権限であって、法務省が一定の自分の身内の者を特認制度で調査士にするという手段として、圧力として使われてはならない、こう思うのですが、こういうことが新聞紙上に発表された以上、その内部関係について言いたいことがあればおっしゃってください。



多田参考人 お答えをいたします。


 国家試験制度は、その職域に関する限り、担当する業務の公益性から、それに適合する能力を備えた者に与えられる資格であるということは言うまでもないわけでございます。


今回の改正の特認制度は、表示登記事務に10年以上従事した者に与えるとするならば、法第5条のただし書きによる法律についての一部免除規定を整理すべきである、2の問題といたしまして、第32号によるものとすれば、表示登記事務に10年以上従事した者であって、5条のただし書きによる者に限定すべきである、こういうような意見がなされたわけでございます。


制度の導入については、資格認定者は、当面表示登記事務に10年以上の経験を有する者であって、調査士の業務を行うのにふさわしい技術、能力を備えた者に限定する、さらに社会的な業務とのバランスの上において需要を考慮して運営することを望むものである、こういうような意見がなされたわけでございます。


 結局、ただいま御説のように、朝日新聞の記事の問題でございますが、この問題につきましては、法改正に対していろいろな錯雑があったということで、会長が交代をしております。


私が会長になりまして、先ほど陳述の中で申し上げましたように、法務省と十分協議をして皆さんの納得を得て改正をした。これには約7カ月ほど経過をしておりますけれども、そうして皆さん自主的に考えて、調査士の利益になる方法はどれがいいかということで判断して改正をしたわけでございます。


しかしながら、反対運動をした中にはまだ釈然としない者もあろうかと思いますけれども、これは組織として決定をしたものであって、決して圧力によってしたものでないということは申し上げられると思います。


 それともう一つには、報酬の問題を取引したというような印象でございますが、この問題につきましては総会にも、法改正と報酬改定は全然別個な取り扱いとして考えている、これは何も関連したものでないということの説明をいたしまして了承され、機関において決定をしたものでございます。



正森委員 そうすると、私が言いますのは、この大橋光雄さんの「論壇」への投稿が、たとえば半年前の投稿であればそんなに問題にしないのですけれども、79418日というと皆さんが了解をなさったはずであるのに、その後に、なおかつ東京土地家屋調査士会副会長という責任ある立場にある人がこういう投稿をされるのは非常に問題だと思うのですね。


 そうすると、この投稿は誤りであって、そういうことは全然なかったと考えておる、こう言われるのですか。


それとも、会員の一部にそういうことを考える者は多少あったと思うけれども、最終的には了承してくれた、こういうニュアンスなのですか。


どちらです。



多田参考人 いま御質問の後段で御意見のあったように、そういう者も必ずしもなしとはしないわけでございます。


そういうことから連合会といたしましては、賛成を了承しない者もある、しかしながら組織の決定でございますので、組織の統一を乱すことについては問題があろうかと考えるわけでございます。



正森委員 それでは、それに関連してもう一つ伺いますが、土地家屋調査士法改正問題について支部長会議を招集なさったことがあると思うのです。


 その招集趣旨というのを見ますと、法務職員が無試験で調査士となる場合の致命的な欠陥は、調査業務にとって生命とも言うべき現場実務を持っていないという点であり、その他の問題点ともあわせ考えるまでもなく、この特認制度導入案はこれだけでも論外ではないかというのが理事会の協議内容であります、こういうことで支部長会議を招集したことになっているのですけれども、そういうことはあるのですか。


もしそういう意見があるとすれば、私は、何も法務職員を特認で任命するのに絶対反対だと言うておるのではないので、弊害さえ除かれればそれもいいと思いますが、現場実務を全然持っていないという点についての是正あるいは改善というのは、どういうぐあいにされるのですか。



多田参考人 ただいま御質問のありましたのは連合会の行事でないと思います、連合会は支部長会議というものを持っておりませんから。


 この問題につきましては、法務当局の説明によりますと、表示登記については職権をもって登記事務の処理をしている、これは法律上は確かにそういうことになっておるわけでございます。


却下事件については登記官が積極的に現場の調査をし、測量をし、そして登記を職権によってやるわけでございます。


法律上では、資格が十分備わっているということが言われるわけでございますけれども、実際問題としてはそれは不可能であろうということから、法務当局といたしましては、現在、研修のために職員を測量学校に派遣いたしまして、終了した者を表示登記専門官として、この職に当たらせておるわけでございます。


したがいまして、全然能力がないということでもございませんので、さらにこの中で厳選をして資格を与えるということについては、理論的には問題がなかろう、このように理解しておるわけでございます。



正森委員 それから、先ほど報酬の点が出ましたが、連合会としては、現在の時点で適正な報酬というのはどのようなものと考えておられるか、報酬制度のあり方について御意見をお聞かせ願いたい。


 以上で終わりたいと思います。



多田参考人 お答えをいたします。


 報酬制度につきましては、先ほども申し上げておりますように、公共料金に準ずるものとして政策的に低額であるということで、この問題につきましては、私ども現場において作業をいたします調査士業務の問題からいろいろな問題点を提起いたしまして、法務省と話し合いをするわけでございますけれども、こういう点についてはわれわれの主張するものを率直に受けとめていただいて、われわれの求める報酬に改正したい、このように考えております。


この問題につきましてはたくさんの隘路があるわけでございますが、こういうふうな配慮をもってしていただくように、せひお願いしたいと思うわけでございます。



正森委員 香川民事局長が来ておられますので、欠席判決になってもいけませんから、いまの朝日の「論壇」に大橋さんの意見が載っておりましたことについて、何か御発言の御意思がございましたらお聞きして、終わりたいと思います。



香川政府委員 「論壇」の記事は、私もざっと読んだ限りでございますが、率直なところ、どうしてああいった主張、意見が述べられたのか、私にはきわめて理一解に苦しむところでございます。




山崎(武)委員 まず最初に、今回の土地家屋調査士法の改正の要点を簡単に説明願います。


 昨年の国会において司法書士法の一部改正がされ、それとほぼ同趣旨のものと理解しておりますが、特に違っている点があれば、その内容と理由について説明願います。



香川政府委員 今回の調査士法の改正の内容は、結果的に見ますと、昨年御審議願いました司法書士法の改正と同じ内容でございます。


 ただ、司法書士法の改正は、国家試験制を導入すると同時に、従来ございました法務局、地方法務局長の特別選考、特認制度と言われているものでございますが、司法書士の資格付与についても国家試験を導入すると同時に、特認制度を法務大臣の認定のもとに行うということにいたしましたのに対比いたしまして、調査士法の方は、従来から国家試験が導入されておるわけでございます。


それに、新たに法務大臣の認定による特認制度を取り入れたという点が、調査士法だけで見ますと大きく変わる主要な点だろう、かように考えるわけでございます。



山崎(武)委員 今回の法改正は、昨年の司法書士法改正とほぼその内容を同じくするものでありますから、個々の改正点についての議論はしばらくおくとして、第3条の改正による土地家屋調査士資格の法務大臣による認定制度については、司法書士についても同様の制度があるとはいうものの、土地家屋調査士制度にとっては、今回初めて導入されようとするものであります。


 このような制度を導入しようとする趣旨、目的は何か、説明願いたい。



香川政府委員 ほとんどの業法におきまして、何らかの形でいわゆる特認制度が採用されておるわけでございます。


もともと土地家屋調査士法がそういった特認制度を取り入れていなかった大きな理由は、御案内のとおり、土地台帳、家屋台帳の制度が戦後、昭和25年に登記所の所管になりまして、そこで初めて登記所におきまして、現在で申します不動産の表示登記制度、当時の台帳登録制度を所掌することになったわけでございます。


 さような草創の時期でございますので、したがって特認と申しましても、事務を取り扱う法務局の職員の側にそれだけ知識、能力がないのは当然のことでございまして、徐々にそれらの知識、技能の習得を図りながら、台帳登録制度ひいては今日の不動産表示登記制度の充実を図っていく、かような姿勢で臨まれて、したがって土地家屋調査士法について特認制度が当初は採用されていなかった、かようなことだろうと思うのであります。


 そういったことになりまして、今日まで約30年の歳月を経ておるわけでございまして、その間私どもといたしまして、不十分ではございますけれども、不動席の表示登記制度の充実を図るべく努力してきたつもりでございまして、ちなみに申し上げますれば、職員のその面での資質の向上を図る意味から、昭和43年度以来、測量の専門の学校に一定数の職員を派遣いたしまして、そこで十分な研さんを経て、戻ってきて表示登記制度に従事させる、あわせて表示登記専門官というような官職の新設もいたしまして、今日まで参っておるわけでございます。


 しかし端的に申し上げまして、職員にそういった表示登記制度というものの重要性、ひいてはそれに対処できるみずからの知識、技能を向上させるためには、そういった知識、技能を習得することによって、自分も土地家屋調査士としての資格が付与されるのだという希望あるいは自覚というものを植えつけることが、何よりも大事だと思うのであります。


表示登記制度の充実を図る一環として職員の士気の高揚と申しますか、そういったことを考えますならば、特認制度の導入は、一つの方法として非常に重要な意味を持ってくるであろうと考えるわけであります。


 もともと現在の表示登記制度の法制上のあり方を考えますと、土地家屋調査士が調査、測量した結果を登記申請という形で申請してまいりました場合に、必要があれば登記官が実地調査、つまり調査、測量も行いまして、みずからの調査、測量の結果と申請内容がそごするときには、その申請を却下するというふうなたてまえになっておるわけであります。


したがって、純粋に法律面だけ見ますれば、本来登記官というものは、調査士と同様あるいはそれ以上の知識、能力を持っていなければ、この仕事は十分にこなせないたてまえになっておるわけであります。


 法律上そういった職責を持っておる登記官というもの、さらにはまた、先ほど申しましたような表示登記制度の充実を図るという両方のことから申しまして、理論的にも実際上も特認制度の導入は決して不合理なものではない、むしろ妥当なものだと私どもは考えておるわけでございます。


 しかし、30年たったと申しましても、現在の実態をつぶさに見ますと、すべての登記所の従事職員について特認制度によって資格を与えるということは、決してほめたことではないわけであります。


したがって、法制上は与えてしかるべきものでありましても、実態はそこまでまだまだ来ていないという現状を十分認識いたしまして、今回の御審議願っている法案の附則には当分の間、法務大臣が調査、測量のための知識、技能について特別の試験を行う、いわば国家試験と同質の試験を行って特認の資格を付与する、こういう暫定措置をとっておるわけであります。


この暫定措置の運用のあり方といたしまして、先ほど参考人からの意見聴取の際にも問題になりましたが、連合会としてこういうふうな運用にしてもらいたいという御要望がございまして、十分もっともなことでございますので、私どもとしてそういった点を了承して、その線に沿っていきたい。


 具体的に申し上げますれば、法律的には10年以上表示登記事務に従事した者で知識、技能が調査士としての職務にたえる、こうなっておるわけでありますが、これを具体的に実施いたします場合の基準といたしまして、10年以上のほかに、表示登記専門官として3年間表示登記事務に従事した者、つまり先ほど申しましたように、測量学校で半年の研さんを積んできて、そして表示登記専門官になって3年間その職務に従事した者から選考するというふうなことを考えておるわけであります。


ただ、私どもといたしましては、いろいろの試験のやり方あるいは選考の基準等についても実態を見きわめながら、さらにはまた連合会とよく協議をしながら進めてまいる必要がございますので、私の感じといたしましては、そういったことを準備して実施していくためには、この制度は実際は5年間は動かせないというふうな心づもりでおるわけでございます。



山崎(武)委員 土地家屋調査士会においては、今回の改正については、大臣による資格認定制度を除いては特に異論がなかったが、この制度の導入については種々の意見があったと聞いております。


 最終的には、この制度の道人を含め、今回の改正案について賛成しているということでありますが、法務当局と調査士会との意見調整の経緯について御説明願います。



香川政府委員 私の感じておりますことは、昨年司法書士法の改正をお願い申し上げたわけでございますが、従来の経緯から、司法書士法の改正が司法書士会連合会の方から強い要望もあり、国会の附帯決議もございまして、そちらの方のためにいろいろの協議を積み重ねてきておったわけであります。


司法書士法の方がそういうことで意見がまとまりますと、いわば横並び的に調査士連合会の方にも同様の改正について意見を求めて、従来はそれで賛成を得て両法案同時に国会に提出しておった、こういう経緯があったわけでございます。


 実は、これは私どもの至らなかった点でございますが、昨年、司法書士法の改正についてもいろいろ問題がございまして、もっぱらそちらの方との協議に時間を費やしまして、調査士法の改正について、並行的にそういった協議を連合会と積み重ねる努力をしなかった点がまずあったと思うのであります。


そういうことで、司法書士法の改正法案が連合会と私どもの間で内容的にまとまりまして、その段階で調査士連合会に対して、こういう改正でいかがであろうかということを照会したために、時間的に十分議論をする余裕がなかったと申しますか、そういったことから、私どもの先ほど申しましたような趣旨あるいは運用についての考え方等も十分連合会の方に理解が得られなかった。


これは私どもとして申しわけなく思っておるわけでございますが、そういった経緯で、端的に申し上げますれば、一つの不信感と申しますかあるいは誤解というふうなことで、反対意見も相当強く出たということで法案提出を見送ったわけでございます。


 さような結果になったわけでございますが、車の両輪であるべき二つの制度について、内容的に非常に不公平なと申しますか、そういう扱いというのは一口も放置できないわけでございますので、昨年来連合会とも協議を重ねてまいりまして、私どもの意図することあるいは連合会のお考えになっておること等も十分意見を交換する時間的な余裕がございまして、そこでお互い理解が深まりまして円満に妥結になった、かような経緯でございます。



山崎(武)委員 法務大臣による資格認定制度の運用については、土地家屋調査士会においても重大な関心を持たざるを得ないところであると考えます。


 調査士会は、この件についてどのような意見なり要望を法務当局に対して述べているのか、また法務当局としては、これにどのように対処しているのか。


なお、今後における運用上の問題点については、土地家屋調査士会の意見を十分に尊重し、運用の適正を図っていくことが必要と考えるが、いかがでございますか。



香川政府委員 先ほど申しましたように、法律的には、10年以上表示登記事務に従事した職員で、知識、技能が調査士としてふさわしいものを備えておるという者について大臣が認定する、こういうことになっておるわけでありまして、附則で、その調査、測量の技能、知識については、必要があるときに法務大臣は試験をするということになっておるわけでございますが、この運用につきまして、先ほど申しましたように、10年のほかに表示登記専門官として3年従事した者から選定する、そういう要望がございます。


 これは、かねがね私どももさような運用を考えておるわけでありまして、さらにいろいろの、これはあからさまに要望としては出ておりませんが、先ほども参考人に対する質疑で問題になりましたように、やはり需給の関係もあるわけでございます。


そういった点についても十分配意していかなければならぬ。


これは、そのために特認を少なくするというふうなことのみならず、国家試験制のもとでの需給のバランスを図るにはどうしたらいいかというふうな問題もあるわけでございます。


 したがって、従来からも試験委員は土地家屋調査士連合会から御推薦を得て任命いたしておりますが、そういった問題の内容のみならず、試験の運用と申しますか、そういう点についても今後とも連合会から十分意見を徴して、遺憾のないようにしてまいりたいというふうに考えております。



山崎(武)委員 大臣による資格認定制度の導入が表示登記制度の充実強化につながるということでありますが、いまさら申し上げるまでもなく、表示登記は権利の客体である不動産の所在、位置等を正確に国民に知らせるためのものとしてきわめて重要なものであります。


 しかしながら、表示登記事務の処理の現状を見ると、法務局における組織、機構、人員の面においてはまだまだ不十分な面があり、また、表示登記を処理するための基本となる一筆ごとの土地の位置、区画等を明らかにするため、不動産登記法第17条により登記所に備えるべきものとされている地図についても、現状においては、明治の初期に作製されたいわゆる公図に頼っているというのが大方の実情であり、この公図の不正確さに起因する表示登記の混乱も少なくないと聞いております。


 これらの問題は、表示登記の重要性を考えるとき放置できない問題であり、早急にその改善を図るべきものであると考えます。


また土地家屋調査士にとっても、その業務を円滑かつ適正に処理し、国民の信頼を得るというためには、これらの問題の早急な解決が望まれているところであります。


予算その他の問題を伴う問題であるので、一挙に解決できる問題であるとは考えませんが、法務当局としては、基本的にどのような方針で臨んでいるか、承りたい。



香川政府委員 表示登記制度の充実を図るためには、その職にたえる職員をできるだけ多く配置するということは、もう言うまでもないわけでございますけれども、実際問題といたしまして、増員の抑制がきわめて厳しい折から、増員のみに頼っておったのでは、百年河清を待つということにならざるを得ないわけでございます。


 私の個人的な考えといたしまして、表示登記制度の充実ということは、やはり役所側でできることには限界があると申しますか、今日の状況のもとでは、やらなければならないことであってもこれ以上はなかなかできない面があることは否定できないと思うのであります。


それを補完していただくと言っては言い過ぎかもしれませんが、やはり土地家屋調査士制度をフルに活用いたしまして、調査士の御協力によって表示登記制度を充実していくということを、当面は考えざるを得ないというふうに思うのであります。


さような意味から、個々の土地家屋調査士の資質の向上のみならず、調査士連合会あるいは単位会のその面での御理解のある御協力が何よりも大事なことだというふうに考えておるわけであります。



山崎(武)委員 次に、第二の報酬の問題でありますが、現在の報酬体系のあり方が合理的かつ適切なものであるかどうかについては、土地家屋調査士会においても種々の意見があるところであります。


どの程度の報酬が適当かは、これを支払う立場にある依頼者たる一般国民の立場も考えなければならないのは当然でありますが、調査士会の意見も十分に聞いて、これを適正なものに改めていく必要があると考えます。


この点についてどのように考えているか承ります。



香川政府委員 それから第二番目の報酬の問題でございますが、実は昨年の12月に連合会の方から、相当期間検討された結果の報酬改定案の御提示がございました。


これは従来の報酬体系を大幅に変更するものでございまして、現在の報酬規定そのものにも、連合会の御指摘のような欠陥は確かにあると思うのであります。


ただ、それを是正する仕方といたしましてぜひとも考えなければなりませんのは、参考人の意見にもございましたように、国民に対して表示登記申請の義務を課しておる、過料の制裁のもとにそういった義務を課しておる、その義務を履行しようとする場合に、どうも素人の個々の国民はみずから申請手続をやれないということがあって調査士さんに依頼せざるを得ない、さような面があるわけでございまして、そういう義務を課しておる点、しかも実際的には調査士に依頼せざるを得ないということを考えますと、国民側の納得のいただける、しかも無理なく依頼して申請手続を履行するという方途をやはり費用の面でも十分配慮しなければならないという点があるわけでございます。


 それと同時に、この報酬の問題は、最近の風潮といいますか、やはりおおらかにはまいりませんので、支払う側の人の納得を得て、かくかくの規定だから、これこれ支払うのは当然だというふうなことが十分わかるように、報酬規定の一覧性というものが非常に必要なわけでございます。


ところが、現在提出されております連合会の案は、一覧性に非常に欠ける点があるのじゃないか。


ちょっと私ども見ましても、ある事件を依頼したときに、一体どれくらい報酬を取られるかという計算が容易にできないような、一覧性に欠ける点があるわけでございます。


 そういった点も何かの工夫をしなければならぬというふうなことがございまして、いま鋭意検討いたしておるわけでございますけれども、なかなか、これは率直に申しまして、現在の連合会の改定案のような姿での報酬改定というのは相当時間がかかるだろうと思うのであります。


 ところが現在の報酬は、全国的には51年の1月だったと思いますが、に改定されておりまして、東京は1年半ばかりおくれたわけでございますが、約3年たっておるわけであります。


その間の物価上昇等も20数%見込まれるわけでございまして、したがってさしあたりの問題としては、現行報酬規定の体系のままにして、いわば物価上昇分等をそれに乗じた改定をまずやって、その上で根本的な体系の変更に取り組みたい、かように考えておるわけでございます。




飯田委員 第三条の点ですが、第3条の2号、これは特認の調査士のように見えますけれども、法律によりますと、これは試験を課して認定するとなっております。


 試験を課するということになりますと、結局第1号と同じではないか、こう思いますが、何か特別の区別しなければならぬ理由があるのでしょうか。



香川政府委員 原則的なと申しますか、一応の土地家屋調査士試験というのは毎年一回全国的に行うわけでございます。2号のいわゆる特認の関係は、やめていく職員を考えての規定でございますので、年に一回では足りないわけでございまして、必要がある都度やるわけでございます。


 そういう特殊性があるのと、それからこの関係での附則の規定で、当分の間、法務大臣が必要あるときは調査、測量に関する試験をやるということになっておりますのは、現在の登記従事職員、これが不動産の表示に関する登記に10年間従事いたしましても、なお技能、知識において直ちに調査士にしていいというわけにまいらぬ面もあるわけでございますので、暫定的な措置として、国家試験と同じような程度の試験を調査、測量に関してやるという暫定措置を決めておるわけでございます。


これは、おいおい登記所の職員がこの面での知識、技能を持ち合わせてまいりますれば、附則による試験はもちろんやらないで、3条の2号一本で特別選考するというふうに考えておるわけでございます。