S60/04/19 衆議院 法務委員会



山田 英介君


vs


法務省民事局長 枇杷田泰助君





山田委員 もう一つ、この際お伺いいたしておきたいと思いますが、昭和60年度、今年度から国家公務員定年制が導入をされます。


恐らく法務省の御関係でも退職者が、法務省に限りませんけれども、全体的にふえていく傾向になるだろう。


そういう中で、これは法務大臣の特別認定、特認の問題でありますが、53年法改正で司法書士試験というのは国家試験に移行いたしましたけれども、現実には国家試験合格組の司法書士と法務大臣の特別認定、特認という形での司法書士、こういう流れがあるわけでございますが、退職者がふえていく傾向の中でこの特認をふやしていくのではないか、大変またふえていくのではないか、こういう指摘がありますけれども、その点につきましてはいかがでございますか。



枇杷田政府委員 定年制の問題と結びつくかどうかわかりません。


と申しますのは、法務局の職員で満60歳になってやめるという方が比較的少のうございます。


が、いずれにいたしましても、法務局の職員の年齢構成から見ますと、ここ数年は退職時期を迎える年齢に達する方が多いということは事実でございます。


そのような方々は、登記事務にかなり長期間従事をしてきてその道のベテランであるということが言える人でございます。


そういう人が退職後に司法書士をしたいということで法務大臣の認可を求めるというケースが退職者の数が多くなるにつれて多くなるであろうということは予想されるところでございます。



山田委員 私は、特認の制度を否定するつもりは全くありません。


国家公務員という立場で一定の専門的な能力を身につけられた方が関連の分野で退職後も活躍をされる、この特認の仕組みそのものを否定するつもりはありませんが、ただ、これが無制限に拡大をされていくあるいは歯どめなく特認数がふえていくということになりますと、これは職業選択の自由というような基本的な問題にもかかってくるわけであります。


平たく言えば、特認が大きくなれば、数がふえればふえただけ、需要と供給といいますか、司法書士のバランスというのがあるわけでございますので、一定の500人とか600人とか毎年司法書士とする枠というのは決まっておるわけですから、特認がふえればその分だけ国家試験の合格者が非常に圧迫される、小さくなってくるという関係になるわけであります。


ぜひひとつ、これは公益法人司法書士協会という新しい制度というものを内容としている法改正審議でありますので、この特認の問題は一退職者数がふえてくればそれにつれて特認数もふえるという局長の答弁かと今伺いましたけれども、バランス的にどうなんでしょうかね。


バランス的に、国家試験によって司法書士になる者と特認で司法書士になる者と今までどの程度のバランスでしたか。


そして、基準というのはおかしいですけれども、これからはどういう比率なりバランスなりを踏まえて運用されようとなさっておるのでしょうか。



枇杷田政府委員 先ほど、退職者の数がふえるにつれて法務大臣の認可を求める、希望するという人もふえるであろうというふうに申し上げました。


しかしながら、私の聞き違いかもしれませんけれども、特認の人が多くなればその分だけ試験合格者の枠が減るというようなことはないわけでございます。試験合格者は、国家試験に一定の基準の点数を取るといいますか、能力があるというふうに判定をされた人は、司法書士の資格を与えるという意味で試験合格をするわけでございます。


そして、登録につきましても毎年500人とかというふうな枠があるわけではございません。


したがいまして、試験合格者の方を圧迫するということは全くないわけでございます。


ただ、現在の司法書士の業界全体で、先ほどおっしゃったように需要と供給の関係ではかつてほど登記事件が激増していくというふうなことは少しなくなってきた、漸増程度のことになってきたという意味では、余り司法書士の数が多くなってしまうと、言葉は悪いですけれどもだぶつきぎみになるというふうなことがあるのかもしれません。


あるようにも聞いておるわけでございます。


しかし、退職者の数が多くなるといいましても、そう一遍に2倍にも3倍にもなるというわけのものではございません。


また、退職者もそういう全体の状況はわかっておりますので、必ず全部が司法書士になるという希望を持つわけのものでもございません。


私どもも、司法書士以外のことでの再就職の道ができればそれもいいことだというふうに考えております。


 今後がどういうことになるかということは予測しがたいことでございますが、先ほどのお尋ねの中の比率でございますけれども、国家試験合格者が60%、それから法務大臣の認可を受けて司法書士になるというのが40%ということが大体ずっと続いておるようでございます。


将来は、国家試験の合格者数も、これは毎年定員で決まっているわけではございませんので一概には言えませんけれども、先ほどのような事情で特認の方が若干はふえるというふうなことが考えられるかとは思いますけれども、ここでははっきりした見通しを申し上げる根拠を持っておりません。



山田委員 局長、現状が国家試験合格者が6割、特認が4割というような状況のようでございますので、できましたらそのあたりを一つの目安にして、余りそれからバランスが崩れて特認者がふえるというようなことは少なくともないようにお願いしたいなというように思っておりますが、この点いかがでございますか。



枇杷田政府委員 そのような配慮も一面では必要だということは私も否定はいたしませんけれども、ただ、理屈を申し上げますと、国家試験の方もそれから特別認可の方も、司法書士となるだけの能力があるかどうかという客観的な基準で決めるということになりますので、そういう比率的なものを余り表面に出して考えることもいかがかとは思いますが、おっしゃる御趣旨は私どもわからないわけではございませんので、そういう御趣旨をよく頭にとめまして、今後の運営はいろいろな意味での問題が余り起こらないようにというふうなことは配慮してまいりたいと思います。



山田委員 ぜひお願いしたいと思います。